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2008年2月22日 第31回サイエンスカフェ

アンモナイトが語る大陸移動~古生物地理のロマン~

当日の様子

日本列島の一部は古生代には赤道直下にあったというと驚かれるでしょうか。地球は活きていて、つねにその姿を変えています。大陸や海の配置も時代ごとに大きく変化してきました。大陸の移動の歴史を復元するにはいろいろな方法がありますが、生物(古生物)地理からのアプローチも有力な手段です。なぜなら、生物は環境に支配され、グループごとに生息する範囲が定まっていて、近接した大陸どうしは同じ生物地理区に属していたと考えられるからです。今回のサイエンスカフェでは、古生代中期に出現し中生代末に絶滅するまで世界の海に栄えていた、アンモナイト化石をもちいた古地理研究(大陸配置の復元)について紹介します。

当日の講演資料(PDF 5.65MB)PDF

開催情報

開催日 : 2008年2月22日(金)18:30~20:00
会場 : せんだいメディアテーク

永広 昌之 東北大学学術資源研究公開センター総合学術博物館教授


永広教授は、いくつかの古い大陸が次々に衝突・合体して成長してきた、アジア大陸の地質構造発達史の研究をアンモナイト化石資料などを用いて行っています。古生物資料は、地層の年代決定とともに、古生物地理区の復元をとおして、大陸相互の関係を科学的に推理するデータとしても用いることができます。永年蓄積された多数のデータを背景に(“スローサイエンス”)、日本列島の中では古い地質からなりたっている、南部北上帯の誕生から現位置への移動の過程の復元に取り組んでいます。


当日の様子

QANDA

アンモノイドの巻き方に、右巻き、左巻きがあるのですか?なぜ右巻き、左巻きがあるのですか?また、アンモノイドはなぜ巻く必要があったのですか?
 大多数のアンモノイドは、蚊取り線香のようにある平面内で巻いています。巻きの外側部が腹、内側部が背であり、口を前にして背側から殻を見たときの左右が左側面および右側面となります。 アンモノイドは左右対称ですから、右から見ると左巻き、左から見ると右巻きとなり、巻き方向は意味をもちません。 しかし、いわゆる異常巻きのアンモノイドには巻貝のように平面巻きでないものもあり、この場合は左巻きと右巻きがあります。なぜ、右巻き、左巻きがあるのかはよくわかってはいないようです。

 古生代はじめのオウムガイは真直ぐな殻をもっていましたが(直角貝)、しだいに巻くようになりました。アンモノイドも、真直ぐな殻のバクトリテス目から分かれて、デボン紀に次第に巻きがつよくなってきました。なぜ巻くのかについてもわからないことが多いのですが、殻が次第に大きくなっていてきたときに、真直ぐなままよりも巻いた方が、同じ殻の長さ(巻いた部分をほどいた長さ)で比較するとより動きやすく、安定であるようです 。


アンモノイドとそうでないものはどうやって区別するのですか?縫合線などで、素人でもアンモノイドの種類はわかるのでしょうか?
 巻貝もアンモノイドやオウムガイのように巻いた殻をもっていますが、隔壁や体管(連室細管)がないので簡単に区別できます。アンモノイドとオウムガイは、一般には、アンモノイドの体管が普通腹側に偏在し、オウムガイのそれは殻中央にあること、真ん中で切断したとき、隔壁がアンモノイドの場合は口側に凸面をなし、オウムガイはその逆であることで区別できます。  ただし、これには例外もあります。巻いた殻の最初の部分に、アンモノイドは初期室という小さな球状の部屋をもつのに対して、オウムガイはもたないというのがより厳密な見分け方ですが、よほど保存のよい標本でないと初期室は観察できないでしょう。

 縫合線や殻の形が特異なアンモノイドは、図鑑などがあれば比較的分りやすいのですが、一見するとよく似ていても、全く違った種類のものもあるので、同定(他のものと区別し , 名前をつけること)はそれほど簡単ではありません。


アンモノイドはなぜ進化が早かったのですか?なぜオウムガイが生き残って、アンモノイドが絶滅したのでしょうか?絶滅したアンモノイドとしなかったものの違いは?
 アンモノイドにとって古生代~中生代の浅海がすみやすく、また、敵が少なかったので、浅海域のさまざまな地域に適応し、多くの種類に分化するとともに、さらに形をかえていったと考えられます。しかし、大繁栄し、あまりに細かく分かれるということは、特殊化したということでもあり、環境の激変に対応できずに絶滅したのかも知れません。オウムガイはあまり進化しなかったので、環境の変化についていけたという考えがあります。 また、アンモノイドがすむ浅海域はエサも多く通常はいい環境なのですが、海水準変動などの影響をつよくうけます。オウムガイは、アンモノイドに追いやられてやや深い海にすむようになっていたため、絶滅をのがれたのではという見方もあります。

 アンモノイドの中にも、短い時間で多様な種類に分かれて、大繁栄したグループと、比較的形を変えず、種類もすくなかったグループがいましたが、前者はある時期絶滅し、生き残った後者の仲間からまた新たに繁栄するグループが誕生するというような傾向が見られます。


ペルム紀末の生物大量絶滅の原因はなんですか?
 ペルム紀末は超大陸パンゲアが完成し、海岸線の減少にともない、すみやすい浅海部の面積が極端に減った時期にあたります。同時に、大陸氷床の発達で海水準が低下し、浅海部が干上がってしまったことが絶滅の大きな原因であると考えられています。

 一方、ペルム紀末に地球規模の激しい火山活動があり、環境の激変を招いたという考えや、太陽活動の変化、巨大隕石の衝突説などたくさんの原因が考えられています。ペルム紀末以外にも何回もの生物絶滅イベントがあり、そのたびにアンモノイドも多くのグループが絶滅し、その後に新たなグループの登場を迎えましたが、白亜紀末にはついに完全に姿を消してしまいました。


縫合線はなぜ複雑になったのですか?縫合線はアンモノイドの成長とどのように関わっているのですか?サイクロロバス科の縫合線が進化した後で退化したのはなぜでしょう?他の種にも同じような退化があったとしたら、原因は特定できますか?
 縫合線(隔壁)がなぜ複雑化していったのかはよくわかってはいません。複雑化することで殻の強度を増したという考えもありますが、それですべてが説明できるという訳でもなさそうです。ひとつの個体では成長初期には縫合線は単純で、体の成長とともに次第に複雑になっていきます。サイクロロバス科の諸属の縫合線は進化とともに複雑化してきましたが、その複雑化の傾向には一定のパターンがあります。縫合線にかぎらず、進化にともなう形態変化には一定の方向性があることが多いようです。絶滅に近づいたときに(ある程度進化した後で)、退化とよばれる形態の単純化が見られる例もありますが、この原因もよくわかってはいません。


化石を見るだけでアンモノイドが動きまわることができたとわかるのですか?底生種はいなかったのでしょうか?絶滅した生物なのに生息していた環境がなぜわかるのですか?遊泳性なのになぜ環境がわかるのですか?大陸移動前でも同じアンモノイドが離れたところに現れるのはなぜですか?
 もちろんアンモノイドの化石を見ただけですべてがわかるわけではありませんが、殻の形や装飾から、遊泳に適していたか、底ですむのに適していたかがわかる場合もあります。なめらかな、装飾の少ない殻をもつものは一般に高速遊泳に適していたと考えられ、強いイボやトゲをもち、殻の厚いものは激しい水流のある海底で暮らしていたのではないかと推測されています。アンモノイドは遊泳性とはいえ、おもに浅海域で暮らしていました。化石が埋まっていた地層の性質や共産する他の化石からも環境は推定できます。また、古地磁気資料などで古緯度が分っている地域のアンモノイドの分布データから大まかな生息緯度を復元もします。

  数千 km も離れた地域に同じ種類のアンモノイドが見られることもあります。たとえば、中期ペルム紀に最初に現れたセラタイトであるパラセルティテス・エレガンスという種は北米南西部~南米北端部だけではなく、遠くはなれたテチス海西部のシシリー島や中東の各地、中国や北上山地など、当時赤道域にあったすべての地域から産出します。これは現在の太平洋のように、おそらくは赤道に沿う強い海流があり、それにのって分布を広げたものと考えられます。


ペルム紀のアンモノイドが西日本で少なく、北上山地で多いのはなぜですか?なぜ北上山地にはきれいに色々な時代の地層が出ているのですか?仙台でアンモノイドの採れる場所はどこ? アンモノイドはなぜ土にならずに化石となってのこるのですか?
 日本列島の、アンモノイドがいた、古生代後半~ジュラ紀の地層は大部分が付加体でできています。付加体は、沈み込む海洋プレート上部とその上に体積した遠洋(深海)堆積物が、海溝にたまった泥や砂と複雑に混じり合ったもので、アンモノイドが化石として入るような場所の堆積物ではありません。ただし、遠洋域でも、南太平洋の島々のような海洋島頂部をおおう浅海性石灰岩にはたくさんのアンモノイドが入っているばあいがあります。秋吉台の石灰岩中の石炭紀アンモノイドはそのような例です。

 北上山地の南半分から阿武隈山地東縁部(南部北上帯)は、古生代から大陸の一部となっていた、日本列島では例外的な地帯です。このような地帯の大陸棚上の浅海に堆積した地層はアンモノイドを含む多種多様な化石を含んでいます。デボン紀から白亜紀までのすべての年代のアンモノイド(もちろんその他の浅海にすんでいた生物の化石も)が北上山地(の南部)から産出するのはそのためです。

 仙台市の東半分は南部北上帯の範囲にありますが、地表部はより新しい新生代の地層におおわれています。そのため、アンモノイドを含む地層は露出していないので、市内ではアンモノイドは採集できません。 1km ほど掘れば、中生代・古生代の地層が出てくるはずですが。。。。仙台に最も近いアンモノイド産地は利府で、中期三畳紀の地層があまり広くはありませんが分布し、昔からアンモノイド産地として有名です。北上川をこえて、北上山地に入ればたくさんの産地があります。

 アンモノイドだけではなく、一般に生物のすべてが化石となって残るわけではありません。ほとんどは腐敗したり、他の生物に食べられたり、殻が溶けたりして残りません。むしろ化石となって私たちの目にふれるのは、きわめて幸運な個体だけです。また、途中で殻が溶けてしまって型だけが残っているもの(印象化石)も少なくありません。北上山地のアンモノイドの多くも印象化石です。


氷があるので、北極・南極では化石は見つからないのでしょうか?
 南極にも夏に ( 南極の ) 岩石が露出する場所はあり、世界各国が地質の調査を行っています。南極の 2/3 は先カンブリア時代という古い時代の変成岩でできていて、化石は出ませんが、西南極には古生代以降の地層もあり、化石が出ています。講演でもご紹介したゴンドワナ大陸にすんでいたリストロサウルスというは虫類の化石は南極でも見つかっています。北極は氷だけで大陸がないので、化石は見つかりません。


オウムガイは食べられますか。また、寿命はどれくらいですか?
 オウムガイは頭足類の仲間で、イカやタコに近縁ですから、味も似ているそうです。寿命は米国の研究者による成長追跡調査で 20 年を超えるものがいることがわかっています。


大陸移動の根拠はアンモノイドや恐竜以外に何がありますか?過去の大陸、たとえばパンゲアなどの位置はどのようにして復元したのですか?
 地球はひとつの大きな磁石になっています。磁力線が地表面となす角度は緯度によって異なり、赤道周辺では地表と平行、極付近では垂直になっています。大陸を作っている地層や岩石にはそれらができた時の地球磁場を記録しているものがありますが、その場合にはできた場所の地球磁場と平行な磁場を得ます。大陸が移動すると、地層や岩石中に残された“磁場の化石“=残留磁化と移動先の磁場の方向とがあわなくなるので、移動したことがわかります。ただし、できたときの緯度はわかりますが、経度はわかりません。

 また、大陸と大陸との衝突帯や昔の海溝に沿った帯状の地帯には変動帯や変成帯が形成されます。これらが大陸分裂で切り離されて、離れ離れになることもあります。同じ時期にできた変動帯や変成帯の延長を捜し求め、元の状態に戻すことで、元の大陸は位置を復元することもできます。

 超大陸パンゲアの形は、このようなさまざまな手法を駆使して復元されました。異なった手法による復元が互いに矛盾しないので、パンゲアを形成する西ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、南極、オーストラリア、インドなどの位置関係については多くの研究者が賛同しています。


大陸はどのようにして動くのですか?大陸はどうして集中し、超大陸になるのですか?これから先の大陸移動は予測できますか?日本列島はどのようにしてできたのでしょうか?
 地球の表面は、厚さ 100km くらいのプレートと呼ばれる、 10 数枚の岩盤によっておおわれており、大陸はそれがのっているプレートの運動にともなって移動します。プレート運動の原動力はマントル内部の熱循環と考えられています。プレート同士がぶつかる場所(海溝)ではどちらかのプレートがもう一方のプレートの下に沈み込みます。プレートにのった大陸が移動してきて別の大陸と衝突すると、大陸は軽くて沈み込めないので、合体して大きくなります。超大陸ができると、また、大意陸が分裂していく歴史が何回かくりかえされてきています。各プレートの現在の運動方向や運動速度はわかっていますので、もし、今の運動を続ければ 1000 万年後にはどうなるか、 1 億年後にはどうなるかは予測することができます。現在太平洋はしだいに閉じていっており、一方、大西洋は広がりつつあります。ただし、大きな大陸同士が衝突したりすると、運動速度が変わったり、運動方向が変わったりしますし、いつかは現在の運動の傾向が大きく変わるときがきます。それがいつか、どう変わるのかを予測するのは、なかなか難しいことでしょう。


大陸移動を知ってそれをどう活かせるの?
 地震や火山活動などはプレートの相互作用で発生しますから、大陸移動を含むプレート運動を知ることは、人間生活に密接に関係するこれらの現象理解につながります。もっとも、プレートの移動速度は通常年間 10cm 以下ですから、何 100km 、何 1000km の大陸移動というような現象は私たちの生活とは直接関係はしません。また、古生代の大陸配置がわかったからといって、それが直接私たちのせいかつに役立つわけではありません。しかし、科学はそのような“無駄”を重ねて発展してきました。子のような“無駄”の研究から新たな考え方が生まれることもあります。


ウェーゲナーの大陸移動説に関する分りやすい本は?
 ウェーゲナーの著作「大陸と海洋の起源」は下記のような翻訳本がでています。 都城秋穂・紫藤文子訳、「大陸と海洋の起源 上・下」岩波文庫( 1981 年) 竹内均全訳・解説、「大陸と海洋の起源」講談社学術文庫( 1990 年)   しかし、これらはやや古いので、図書館に行かないと見ることができないかも知れません。 大陸移動説やプレートテクトニクスに関する本はたくさんありますが、専門的過ぎたり、発行年が古かったりします。比較的最近発行された本としては以下のものがあります(推薦図書というわけではありません)。

木下肇・末廣潔・徐垣・平朝彦、 2005 、 地球の内部で何が起こっているのか? 光文社新書、定価 893 円 宮下敦・ 横山一己 ,2006 、 ゼミナール地球科学入門 : よくわかるプレート・テクトニクス。 日本評論社、 2,310 円

プレートテクトニクスについては、最近の高校の地学の教科書にもかなり詳しく載っていますので、それを参考にされるのもいいでしょう。


研究の苦労話を教えてください?
 研究や調査の苦労話はたくさんあります。日本の調査でもいろんなことがありました。外国の調査でも、私たちはたいがい観光客が行かないような場所に調査に入りますので、ちょっと違った経験も数多くあります。これらについては、またお話する機会がくると思います。


研究の苦労話を教えてください?
 研究や調査の苦労話はたくさんあります。日本の調査でもいろんなことがありました。外国の調査でも、私たちはたいがい観光客が行かないような場所に調査に入りますので、ちょっと違った経験も数多くあります。これらについては、またお話する機会がくると思います。


終わりに:  やや歯切れの悪い回答もありますが、過去の地球や生物進化などを知るデータは多くは残されていないので、いろいろな考えがあり、ある考えだけをご紹介するのも考えものだと思います。私たちは限られた資料から、科学的な推理をへて、過去の状況を復元します。確かなデータもあればやや不確かなデータもあり、何を重視するかも結果に影響し、得られる復元像が研究者により大きく異なることもあります。

 従来の考え方にとらわれず、自由に発想することも大切でしょう。結果的にはまちがっていることもあるかも知れませんが、そこに科学の“ロマン”があります。新たなデータが出てきたときには修正すればいいのです。推理を組み立て直す柔軟な姿勢がありさえすれば......

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