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酸化物ガラスの結晶化における生成初期過程を解明

応用物理学専攻・高橋儀宏助教と藤原巧教授らの研究グループは、物質・材料研究機構・長田実主幹研究員との共同研究により、酸化物ガラスの結晶化における生成初期過程の解明に成功した。

周期性/規則性のないランダム構造を有する酸化物ガラスは、高い透明性を有し、かついかなる形態にも形成可能であることから、我々の生活に身近な材料であると同時に光ファイバ用途など先端材料の一つでもある。最近では、同グループが成功したように、局所的な結晶化により、本来はガラスにはない特徴を活かした光ファイバ型デバイスなどが開発されており、高機能付与の一手法としてガラスの結晶化に注目が集まっている。しかし、結晶化の起源となるガラスの中距離構造(~数ナノメートル)については、ランダム構造ゆえにその確定が困難であり結晶化との関係もこれまでは不明であった。

今回、ボソンピークと呼ばれる特異な分光特性を詳細に調べ、ガラスの結晶化初期過程との関連を明らかにすることに初めて成功した。ガラスにはナノメートルスケールの不均一領域が存在し、その異質な領域が結晶化の初期過程である結晶幼核(エンブリオ)の生成源になることを明確に示した。

この結果は、ガラス形成の段階で後の結晶化の種類や数がすでに決められていることを示しており、したがって、ガラス結晶化の自在な制御のためにはガラス形成に変調を加えるか、またはガラス~結晶化過程に突然変異をもたらすと考えられるレーザー光結晶化等の手法が有効であることを示唆している。今回の成果によって、これまでは探索に留まっていた新たな機能性ガラスの開発に対し、人工的なナノ構造制御を可能とする革新的な創出指針を得ることが出来た。

なお本研究内容に関する詳報はPhysical Review B 誌(米国物理学会、79巻、214204、2009年6月23日)にて公開され、さらに、この論文はVirtual Journal of Nanoscale Science & Technology(米国物理協会、2009年7月6日)に選定された。

研究室

[問い合わせ先] 工学研究科応用物理学専攻 藤原 巧
E-mail: fujiwara*laser.apph.tohoku.ac.jp(◎は@に変更してください。)

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