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平成24年 東北大学総長 年頭所感

 東日本大震災に被災された方には心よりお見舞い申し上げるとともに、復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍され一日も早く復興できることをお祈りいたします。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災から早くも10か月が経ちます。未曾有の大震災は、多くの人命を奪い、地域社会に壊滅的な被害を与え、被災された方は、今なお惨禍の最中にあります。私は、この大震災の悲惨な現実を直視するごとに、深く心が痛みます。と同時に、人間の生存と尊厳を揺るがす過酷な体験は世界の国々に共通するものであり、「9.11」がアメリカ、そして世界を変えたように、「3.11」が日本、そして世界を変えていくものと思います。人類は未曾有の災禍を繰り返し経験してきました。その中で先人達は、その当時にあっては未曾有の災禍と向き合い、英知を探り、生き延びてきました。「3.11」の後も、今を生きる私たちの英知と創造により未来を切り開いていかなければなりません。
これまで東北大学は、100年余という歴史の中で様々な困難に直面しながらも発展してきました。その原動力は、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」を基本に据えながら、絶えざる研究・教育の創造により、社会からの信頼、尊敬、そして愛情という財産を積み上げてきたところにあります。そして今を生きる東北大学も、誤解を恐れずに言えば、この「3.11」の経験を人類共通の資産として、安全・安心社会の創生を目指した新たな人類社会へのパラダイムシフトの実現に全力を尽くすことが使命であると考えます。その決意は、第二期中期目標・中期計画、井上プラン、そして災害科学国際研究所の設置など平成24年度概算決定にも込められています。

 私が年頭にご挨拶をさせていただくのはこれで6回目となります。
井上プランに取り組んだ5年余を経て、東北大学のプレゼンスは着実に向上し、様々な取組が実を結びつつあります。このような成果は、東北大学の皆さんの実践躬行の賜物であることを強く感じております。
「私たちは歴史というものを自分とはほとんど関係のない遠く離れたもののように思っている。(中略)しかし、私たち一人ひとりにも確かな歴史があるのだ。それは日々の歴史だ。(中略)おじけづいて着手せずにこの一日を終えるのか、怠慢のまま送ってしまうのか、あるいは、勇猛にチャレンジしてみるのか、昨日よりもずっとうまく工夫して何かを行うのか。その態度一つ一つが、自分の日々の歴史を作るのだ。」この言葉は、ニーチェの『悦ばしき知識』の中で述べられたものです。
 東北から将来の日本を先導することが求められています。国立大学法人の主体的な機能強化を実現することも求められています。今まさに国立大学法人東北大学の真価が問われています。これまでの常識に捉われず、東北から日本を変えていきましょう。そして、皆さん全員がその主人公です。皆さん一人ひとりの英知、チャレンジ精神、そして行動によって、東北大学は世界リーディングユニバーシティとしてしっかり歩んでいけるものと確信しています。

 さて、新たな年を迎え、私の総長としての任期も残すところ3か月となりました。しかし、ここで立ち止まることなく、揺るぎない将来ビジョンを見据えた大学の改革を着実に進めていくとともに、世界リーディングユニバーシティとして人類社会の発展に貢献する活動を展開しながら、次期総長にバトンを渡したいと思います。
最後になりましたが、今回の大震災は私たちに「絆」の重要性を再確認させてくれました。改めて皆様の強力な御支援、御協力をお願い申し上げて、年頭の挨拶とさせていただきます。
本年もよろしくお願いいたします。

平成24年1月4日 東北大学総長 井上 明久

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