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スカンジナビアの北方林は氷河期から生き残っていた・東北大らの国際研究グループ 古代DNAの分析などにより氷河期以降の植生変遷史の常識を覆す

東北大学大学院農学研究科の陶山佳久准教授と、ウプサラ大学(スウェーデン)、コペンハーゲン大学(デンマーク)などとの国際共同研究グループは、湖底堆積物から得られた古代DNAや植物遺体の分析などによって、スカンジナビア半島の北方針葉樹が最終氷期から生き残っていたことを明らかにしました。これまでの一般的な常識では、最終氷期のスカンジナビアは氷河に覆い尽くされていたと考えられており、現在分布するマツやトウヒなどの北方針葉樹は、氷河期以降に南あるいは東ヨーロッパから分布拡大したものだと理解されてきました。しかし今回の研究によって、この地域の一部に最終氷期から北方林が生き残っていて、現在の分布の祖先になったことが示されました。この成果は、これまで考えられてきた氷河時代からの植物の分布に関する常識を覆すものとして注目され、3月2日付けの国際科学雑誌「Science」に掲載されました。

 

今回の研究では、まず現在ヨーロッパに広く分布しているトウヒの仲間のミトコンドリアDNAのタイプ(系統)の地域分布を調べ、スカンジナビアに特有の希な系統が存在することを見いだしました。次に、この地域の湖の堆積物から得られた古代DNAの分析によって、この系統がおよそ10,300年前に存在していたことがつきとめられました。さらに、別の湖から得られた古代DNAおよび植物遺体の分析によっても、およそ2万年近く前からマツやトウヒがこの地域に分布していたことが明らかにされました。これまで、スカンジナビア半島は最終氷期には氷河に覆われており、そこに現在分布している北方針葉樹は当時分布していなかったと考えられていました。しかし今回の研究の成果は、最終氷期においてスカンジナビア半島に氷河に覆われない “避寒地”があり、北方針葉樹がそこに生き残っていたということを示しています。このことは、これまでの氷河時代からの植物の分布に関する常識を覆すものであり、気候変動下における樹木の分布・生残に関して新たな視点を提供するものとして注目されています。

 

 

[問い合わせ先]

東北大学大学院農学研究科

准教授 陶山 佳久

電話0229-84-7359

suyo*bios.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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