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井上総長メッセージ ~東日本大震災から1年を迎えて~

 2011年3月11日14時46分、太平洋三陸沖で発生した大きな揺れが私たちに想像を絶する被災の苦難と深い悲しみをもたらしました。あの日から1年の歳月が流れました。15,800人を超える人々が亡くなり、本学の学生3名の尊い命も奪われ、今なお3,200人を超える行方不明者がおり、多くの人々が傷つかれました。私たちはこの悲惨で過酷な現実を忘れることはできません。

 東日本大震災により不幸にもお亡くなりになった方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、すべての被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。

 大震災から1月半後、東北大学は始動宣言を行い、「大震災の状況に対する献身的な貢献活動と同時に、地域社会の復旧、復興、そして人類社会の持続的発展に向けて、悲しみを希望の光に変える活動に英知を結集して総力を挙げる覚悟と決意を表明します。」とお約束しました。

 それから今日まで、私たちは世界中の各方面から頂戴した多くの励ましや援助に支えられながら、教育研究基盤の回復に努めてまいりました。本学は現在では平常通りの教育活動を展開し、世界から集まる学生諸君が学習・研究を積み重ね、社会貢献の最前線でも活躍しています。また、本学は被災地の総合大学として、東北大学災害復興新生研究機構を立ち上げ、災害復興・総合研究開発を直ちに開始しました。災害科学国際研究所の設置、東北メディカル・メガバンク計画の実施など国際的な先端研究推進プログラムも動き始めています。

 その一方で、世界各地では大規模災害の発生が続いており、人命を奪い続けています。私たちはこの生きている地球が大地震や津波など自然現象を現出するのは道理であるという現実をもっと直視すべきでありました。

 大震災の発生後、本学のキャンパスは無情の雪に覆われました。その雪は私たちに何かを伝えようとしたのかもしれません。命とは何なのか。人間とは何なのか。地球とは何なのか。そう考えるとき、私たちはもっと地球や自然と向き合い、新たな英知と創造によって、安全で安心な人類社会を創世しなければならないことを痛感いたします。そして、この英知と創造により未来を切り開いていくことのできる知の拠点は大学であり、今まさに東北大学の真価が問われていると考えます。

 本日、大震災1年のメモリアルを迎えるにあたり、東北大学の教職員、学生、同窓生、そして関係する方々の一人ひとりが、大震災で犠牲になられた方々の無念を思い、被災者の苦難と寄り添い、その英知、チャレンジ精神、そして行動によって、明日への扉を開いていただきたい。ここに、東北大学は世界リーディングユニバーシティとして、次世代のために邁進していくことを誓います。

 

2012年3月11日  東北大学総長 井上 明久   

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