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各都道府県の合計特殊出生率転換点は実は2005(平成17)年にあった -2000年から2015年の都道府県別の合計特殊出生率(東北大TFR)遡及計算による検証-

【発表のポイント】

  • 厚生労働省「人口動態統計」の都道府県別合計特殊出生率は、過去の吉田教授らの指摘により2016年以降の数値は正しく計算されるようになったが、2015年以前の数値については遡っては改訂されていないため、地域の合計特殊出生率の通時的な比較ができないという問題が残っていた。
  • 今回、吉田教授らは2015年以前の都道府県別の合計特殊出生率を正しい手法で2000年まで遡って作成した(通称:東北大TFR)。その結果、2000年以降の都道府県別の出生率の動きを全期間を通じて正しく把握することが可能となった。
  • 東北大TFRの結果から、出生率は2005年には全都道府県でそれまでの最低値を記録し,2006年以降には反転して回復局面に入っていたことが明らかになった。また、東北地方や北関東地方で出生率の回復が遅れていることが判明した。
  • 厚労省公表値では都道府県ごとの出生率の転換点が実状を正しく反映していない可能性が示唆され、このことは、この間の少子化対策の判断や保育施設の整備計画のタイミング等にずれが生じることなど、社会的・政策的な問題にもかかわる重大な事柄である。

【概要】

1.2018年「人口動態統計」内の合計特殊出生率をめぐる経緯
東北大学経済学研究科 高齢経済社会研究センターの吉田教授ら研究グループは、過去、厚生労働省から発表される「人口動態統計」の都道府県別合計特殊出生率について、2015年以前の指標値は作成方法に問題があり、時系列比較ができないことを指摘してきました※。
令和元年6月7日に2018年の「人口動態統計」の値が発表されましたが、今回の公表値は吉田教授らの修正の指摘を反映しており、このことは吉田教授の研究グループが日本の人口政策策定指標の改善に寄与したことになります。
なお、この結果、少子化の程度を表す都道府県別の合計特殊出生率(Total Fertility Rate,TFR)が2016年以降低下傾向にあることがわかりました。

2.残る2015以前の公表値問題
しかし、厚労省の公表値は2015年以前については遡っては改訂されていないため、地域の合計特殊出生率の通時的な比較ができないという問題が残っていました。そこで今回、吉田教授らは、2016年以降の厚労省公表値と接続可能な都道府県別の合計特殊出生率(通称:東北大TFR)を2000年まで遡って整え、日本の出生率推移を長期間にわたって振り返って検証しました。

3. 合計特殊出生率の転換点,実は全都道府県で2005年
今回遡及した東北大TFR値でみると出生率は2005年には全都道府県で一度それまでの最低値となっており、2006年以降には反転して回復局面に入っていたことが明らかになりました。しかし、厚労省公表値では都道府県ごとの出生率の転換点が正しく把握できず、実際には2006年から起きていた反転がそれよりも早く観察されたり、遅れて把握されたりと、実状を反映していなかったことがわかりました。このため、この間の少子化対策の判断や保育施設の整備計画のタイミング等にずれが生じたりしかねない社会的・政策的な問題にもかかわる重大な事柄であると言えます。

本研究の詳細は、7月19日に行われる東北大学 社会にインパクトある研究「少子高齢社会から心豊かな長寿社会へ」シンポジウムで報告されます。

※吉田教授らの2015年以前の指標値は国勢調査年とそれ以外の年の公表値が単純比較できないという指摘は、第189回国会でも取り上げられ、政府は算出方法を修正する旨を答弁し、これを受け厚労省は2016年分より、本研究グループによる指摘事項を改善した都道府県別合計特殊出生率を公表しています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学 経済学研究科 高齢経済社会研究センター
教授 吉田 浩 
hyoshida.econ*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
TEL:022-795-6292

東北大学博士(経済学)
石井 憲雄 
ishiinorio2012*gmail.com(*を@に置き換えてください)
TEL:080-7334-8438

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