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ネアンデルタール人絶滅の謎の解明に手がかり -ヨーロッパ最初のホモ・サピエンスの投射技術の解明-

【発表のポイント】

  • イタリアと日本の研究チームが、4万5000〜4万年前のイタリア南部の現生人類(ホモ・サピエンス)の遺跡から、ヨーロッパ最初の投射具の証拠を発見。
  • 投槍器や弓といった投射具の使用により、安全かつ効率的な狩猟が実現。
  • これにより、現生人類は、既にヨーロッパにいたネアンデルタール人よりも生存競争において有利に。
  • ネアンデルタール人が4万年前に絶滅したのに対し、現生人類が人口増加を実現した謎の解明に寄与。

【概要】

イタリアと日本の国際研究チームは、イタリア南部のカヴァロ洞窟から出土した現生人類の三日月形石器を分析し、この石器が投槍器あるいは弓を使って投射された証拠を発見しました。これまで、2万3000年前のフランスのコンブ=ソニエール遺跡から出土した投槍器がヨーロッパ最古の投射具の事例と考えられてきましたが、今回の発見はそれをおよそ2万年遡ります。東北大学の佐野勝宏教授が開発した分析手法により、石器から投射具を使って狩猟していた痕跡を突き止めることに成功しました。4万5000〜4万年前は、ヨーロッパでネアンデルタール人と現生人類が共存していた頃で、ネアンデルタール人が4万年前に絶滅したのに対し、現生人類が人口を増やしていく要因がわかっていませんでした。投槍器や弓を使った狩猟は、生存競争において有利であることがわかっており、今回の発見は、この謎を解明する手がかりとして期待されます。

本研究は、日本学術振興会・科学研究費の若手研究(A)「弓矢猟の出現と波及プロセスに関する考古学的研究」と新学術領域研究「言語の創発過程の人類学的研究」、およびEuropean Research Council(ERC)のプロジェクト助成「SUCCESS - The earliest migration of Homo sapiens in southern Europe」の支援を受けて行われました。

本研究成果は、2019年9月26日(英国時間)にNature Ecology & Evolution誌にオンライン掲載されました。

写真1:現生人類が三日月形石器を矢に付けて弓で投射するイメージ写真 © S. Ricci

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関して)
東北大学東北アジア研究センター 
教授 佐野勝宏
TEL: 022-795-7692
E-mail:sano.k*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学東北アジア研究センター
事務室
Tel.: 022-795-6009
E-mail: asiajimu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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