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ナノの世界で現れる磁気の渦の高速直進運動を初めて実現 ~スピントロニクスの原理を駆使した新たな情報処理・蓄積技術へ~

【発表のポイント】

  • ナノスケールの磁気の渦;磁気スキルミオンの工学利用に向けた革新的材料技術を開発
  • RKKY相互作用、DM相互作用、スピン軌道相互作用などのスピントロニクスの原理を巧みに利用し、室温での電流による直進運動の実現に初めて成功
  • 新概念情報処理・蓄積デバイス応用に向けた重要課題を克服

【概要】

国立大学法人東北大学電気通信研究所の大野英男教授(現総長)、深見俊輔准教授、土肥昂尭博士後期課程学生らは、磁気スキルミオンと呼ばれるナノスケールの磁気の渦を工学利用する上での課題であったスキルミオンホール効果を抑制する新材料技術を開発して積層フェリ結合した磁気スキルミオンを実現し、これまで不可能であった室温での電流による直進運動の観測に成功しました。

磁気スキルミオンとは特殊な磁性体において現れるナノスケールの磁気の渦で、電流によってその位置を操ることができます。10年程前に初めて実験で観測され、それ以来新しい情報処理・蓄積デバイスの実現に向けて盛んな研究が行われてきました。デバイス応用を実現する上では、導入する電流に対して磁気スキルミオンが斜め方向に動いてしまう現象(スキルミオンホール効果)が大きな課題でした。今回研究グループは、スピントロニクスの諸原理を巧みに利用することで右斜め方向と左斜め方向に動くスキルミオンを貼り合わせた積層フェリ結合磁気スキルミオンの形成に成功し、かつ電流によって効率的に駆動されるように材料構成を設計することで、これまで不可能であった室温での直進運動を実証しました。この技術は磁気スキルミオンの応用に向けた重要課題を克服するものであり、新概念情報デバイスの実現に向けた大きな一歩になるものと期待されます。

本研究成果は2019年11月14日19:00(日本時間)に英国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

図1)磁気スキルミオン(下側)とそれを用いた情報記録装置の一部(上側)の模式図。磁気スキルミオン中の矢印は磁気モーメントの方向を表す。1個の磁気スキルミオンは球面上の全方向の磁気モーメントを有しており、これによって連続な変形で生成、消滅させることができない。このスキルミオンの有無を情報の"1", "0"に対応させることで、情報デバイスへ応用できる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
准教授 深見 俊輔
電話 022-217-5555
E-mail:s-fukami*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 電気通信研究所 総務係
電話 022-217-5420
E-mail:somu*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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