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メダカはインド亜大陸に乗ってやって来た~メダカ科魚類の網羅的系統解析~

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 助教 安齋賢
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界中からメダカ科魚類を収集し、網羅的系統樹の推定に成功した。
  • メダカ科魚類の共通祖先はインド亜大陸に起源し、ユーラシア大陸に衝突した後にアジアに分布を拡大していった。
  • メダカの共通祖先は、インド亜大陸上で、恐竜たちも絶滅した中生代末の大量絶滅を生き残った。

【概要】

琉球大、東北大、長浜バイオ大、和歌山高専、神戸大、東山動植物園、OIST、農研機構、国際農研、京都大、遺伝研ら国内の13の研究機関、ならびにインド、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、およびインドネシアの6カ国7つの研究機関から成る国際共同研究チームは、世界中からメダカ科魚類を収集し、ミトコンドリア全ゲノムと5つの核遺伝子の塩基配列の解析から、メダカ科魚類のルーツに迫りました。その結果、西インドの西ガーツ地方(注1)に固有のセトナイメダカ(Oryzias setnai)が、メダカ科魚類の系統進化の中で最も古くに分岐した種であり、その他の東南アジアや東アジアの種は、全てセトナイメダカと姉妹関係(注2)にあることがわかりました。

さらに、化石の情報を元にメダカ科魚類の分岐年代を推定したところ、セトナイメダカとその他のメダカの共通祖先との分岐は、7,400万年前(6,600〜8,800万年前)の中生代後期に遡ることが明らかになりました。この時代は、インド亜大陸がゴンドワナ大陸から分離して(注3)、インド洋を北上している時代に一致します。これは、この時代にメダカの共通祖先がインド亜大陸にいた、つまり、メダカ科魚類はインド亜大陸に起源することを意味します。そして、インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突・合体した後に、メダカ科魚類はアジアに分布を拡大していったと考えられます。最尤法(注4)を用いた祖先分布域の推定でも、メダカ科魚類はインド亜大陸起源で、その後アジアに分布を広げていったというシナリオが支持されました。

セトナイメダカOryzias setnai

【用語解説】

(注1)西ガーツ地方:インドの西海岸沿いにある、標高1,000〜2,700mの山々が全長1,600kmに渡って連なる山脈(西ガーツ山脈)と、その西側の平野部を含む地方。

(注2)姉妹関係:グループAの共通祖先とグループBの共通祖先が、系統樹上で二分岐した関係にある時、グループAとグループBは姉妹関係にあるという。

(注3)インド亜大陸:アフリカ大陸、南米大陸、オーストラリア、南極大陸などと共にゴンドワナ大陸を形成していた大陸の一部。1億3,000年〜1億6,000年前にゴンドワナ大陸から分離し、その後北上して、3,300万年〜5,500万年前にユーラシア大陸に衝突した。

(注4)最尤法:数理統計学において、与えられたデータから、それらが得られる確率分布の母数を推定する手法。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
助教 安齋 賢(あんさい さとし)
TEL: 022-217-6219
E-mail:satoshi.ansai.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科 広報室
TEL:022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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