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試験管の中で培養筋細胞を動かす新規技術・細胞診断法を開発 -寝たきり患者でも筋細胞運動負荷テストを可能に-

【本学研究者情報】

〇大学院医工学研究科病態ナノシステム医工学分野 准教授 神﨑展
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 希少疾患である封入体筋炎注1患者より単離した筋衛星細胞注2を「特殊共培養システム」で分化・発達させ、その収縮能力を高めることに初めて成功した。
  • 電気パルス刺激(EPS)により、その収縮活動量を人為操作して運動負荷を与えると、疾患原因タンパク(TDP-43)の異常局在が惹起されることを発見した
  • 運動性に障害のある筋疾患の場合でも、「特殊共培養システム」を活用することで「運動負荷テスト」などの高次機能診断を行うことを可能にした。

【概要】

骨格筋細胞では、適切な「培養筋細胞系」に乏しいため、培養実験系において筋細胞の高次機能を調べることが困難でした。

東北大学大学院医工学研究科病態ナノシステム医工学分野の神﨑展准教授らの研究グループは、希少筋疾患を含めたさまざまな筋疾患を解析するための「特殊共培養システム」を確立し、それを用いた画期的な細胞診断手法を確立しました。封入体筋炎患者から採取した筋細胞では、運動負荷刺激により、疾患原因タンパクの一つであるTDP-43の異常な局在変化が引き起こされることが見いだされました。この"培養系でヒト筋細胞を運動させる"という「特殊共培養システム」を活用すれば、実際に走ったり運動したりすることが困難な筋疾患であっても、患者から採取した筋衛星細胞を「特殊共培養システム」へと適応することによって「運動負荷テスト」などを"培養系"で実施するなど、高次筋機能診断を行うことが可能となります。

この新技術は、さまざまな筋疾患においても、収縮活動に依存して引き起こされる障害の仕組みの解明に寄与するだけでなく、それらの疾患筋細胞の機能診断、治療薬剤のスクリーニング、さらに、将来的には筋疾患に対する個別化医療指針にも画期的な貢献をもたらすことが期待されます。

本研究成果は、2022年1月20日、国際科学誌Scientific Reports誌(電子版)に掲載されました 。

図1.ヒト筋管細胞の収縮能発達を促す特殊共培養システムとその応用

【用語解説】

注1.封入体筋炎:希少難治性筋疾患の一つであり日本には1000〜1500人の封入体型筋炎患者がいるとされる。主に50歳以上で発症する慢性進行性の筋疾患で、筋力低下と筋萎縮が起きるが、その病態機序は不明である。

注2.筋衛星細胞: 骨格筋組織内に存在する単核の筋幹細胞であり、筋損傷の修復時などに増殖・分化し細胞融合することで筋線維を再生・増強する。培養系においても分化誘導により互いに融合して多核の筋管細胞を形成することができる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院医工学研究科
病態ナノシステム医工学分野
准教授 神﨑 展(かんざき まこと)
電話番号:022-795-4860
Eメール: makoto.kanzaki.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
Eメール:bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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