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金属を含まない触媒でセラミック前駆体高分子の室温合成に成功 ~600℃超の高耐熱性・透明ハイブリッド材料の開発へ~

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 応用化学専攻
助教 朱慧娥
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 室温下でセラミック前駆体高分子注1の効率的合成に成功
  • 金属フリーのホウ素触媒注2を使用することで残留金属の問題も解決
  • 熱硬化反応注3を用いた高性能ハイブリッド材料の試作にも成功

【概要】

 2020年10月に政府が宣言した、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」実現に向けて、機能性材料の製造プロセスにもグリーン化が求められています。種々の機能性材料に用いられているケイ素と酸素を骨格とするシロキサン系高分子の合成では貴金属触媒を使用するため、反応温度や触媒金属の残留による着色や劣化などの問題点を有しています。一方、金属を含まない(フリー)触媒として電子対を受け取る性質を持つルイス酸のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C6F5)3 。以下:ホウ素触媒)を用いる合成では、副反応であるゲル化注4を抑制することが課題でした。

今回、東北大学大学院工学研究科の朱慧娥助教と三ツ石方也教授の研究グループは、反応プロセスの制御によりゲル化の抑制に成功し、熱に弱い炭素--炭素結合を主鎖に持たない新しい環状シロキサン注5前駆体高分子を開発しました。この前駆体高分子は有機溶媒に可溶で、優れた分子柔軟性を示します。さらに、熱硬化反応により、600°Cを超える優れた熱安定性・低誘電率を示す透明な自立膜注6が得られました。この熱安定性は、150℃以上の耐熱性を持つスーパーエンプラとよばれるプラスチックに比べ、優れた性能を示します。低温反応・金属フリー・再機能化可能などの利点をもつため、今回開発したハイブリッド材料は電子デバイスの封止材、接着剤、及び耐熱性コーティング剤などへの応用が期待されます。

本研究成果は2022年10月24日(米国時間)に米国化学会発行の科学誌「Macromolecules」でオンライン公開され、Supplementary Coverにも選出されました。

開発したハイブリッド材料

【用語解説】

注1 前駆体高分子
セラミックスの前駆体として、任意に分子設計でき、一般的に有機溶媒に可溶であり、熱可塑性を有する高分子である。

注2 ホウ素触媒
今回使った触媒はトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。

注3 熱硬化反応
分子の官能基同士が加熱によってネットワーク的に結合し、高分子化する「架橋反応」である。

注4 ゲル化
溶液中で高分子が架橋反応などによりネットワークを形成し、固化する現象である。

注5 環状シロキサン
ケイ素と酸素のSi-O-Si結合からなるシロキサン結合を有し、ケイ素を反応点として有機機能団を有する有機無機ハイブリッド材料の一種。化学式は(R2SiO)nである。Rは有機置換基であり、ビニル基などの反応性置換基の場合、環状シロキサンへの機能団の導入が可能となり、機能性材料への応用が期待される。

注6 自立膜
膜を支えるための基板を必要とせず、それ自体で形状を維持することができる膜である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学工学研究科 応用化学専攻
助教 朱 慧娥(しゅ けいが)
電話: 022-795-7231
E-mail: zhuhuie*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤 みどり
電話: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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