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セルロースナノファイバーで半導体特性を発見 高価なSiに代え安価な木材を使う電子素子の実現に期待

【本学研究者情報】

〇未来科学技術共同研究センター リサーチフェロー 福原幹夫
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • セルロースナノファイバー(CNF)注1組織を制御したナノサイズのアモルファスケナフセルロースナノファイバー(AKCF)シートに、N型負性抵抗注2に基づく直流/交流変換、スイッチング効果、整流特性が発現したことを確認
  • 軽量のカーボンニュートラルバイオ素材によるn型半導体注3への利用が期待

【概要】

CNF の原料である製紙用パルプは、カーボンニュートラル注4素材の地球再生のエース材料として期待されていますが、現時点での応用は機械的・化学的分野に限定されています。

東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェロー、同大学大学院工学研究科附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授らの研究グループは共同で、CNF組織を制御したナノサイズのシート材に半導体特性が発現することを見出しました。

CNF組織を制御したナノサイズのシート材のI(電流)-V(電圧)特性は、負電圧領域に顕著な現象を示すn型半導体特性を示しました。また直流通電時の並列回路(低伝導帯)から交流通電時の並列回路(高伝導帯)に変化する特性も示しました。

このような特徴から、高価な高純度シリコン(Si)素材やレアメタルを用いた化合物半導体と異なり、低廉で無害のバイオ素材による半導体作製の可能性も出てきました。また日本に豊富に存在する森林資源を活用することで、植物由来の半導体によるペーパーエレクトロニクス注5の実用化が期待されます。

本研究成果は、2022 年12月20日にSpringer Nature 発行の Scientific Reports 誌にオンライン掲載されました。

図1 AKCFの-200~+100Vの範囲における昇降電圧に対するI-V特性(上下操作速度1.24 V/s)

【用語解説】

注1 セルロースナノファイバー(CNF)
セルロースを主成分とする植物繊維を、ナノ(1ナノは10億分の1)メートルサイズまでほぐして微細化した素材。環境にやさしい天然物ながら、優れた強度を持つ、熱で膨張しにくい、吸水性が高いなど、さまざまな特徴がある。また植物を原料としているため、再生型資源として気軽に身近なものから手にいれることができる。

注2 N型負性抵抗
負性抵抗は、マイナスの抵抗値を持った素子または回路で、印加する電圧が大きくなると電流が減少する特性を示す抵抗。電流-電圧特性でN型とS型の2種類があります。N型負性抵抗の半導体に電圧を加えると均一な磁場がかかって電流が流れますが、その電圧の値が負性抵抗領域にある場合は不安定になり,わずかな不均一性や擾乱により高電場領域と低電場領域ができます。

注3 n型半導体
負の電荷を持つ自由電子がキャリアとして移動することで電流が生じる半導体です。例えば、4価のSiに微量の5価元素のPやAsを添加すると一つ余剰の電子が生じ色々な特性が発現します。

注4 カーボンニュートラル
2020年10月の日本政府による「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」内容の宣言。日本が目指す「カーボンニュートラル」は、CO2だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にしています。

注5 ペーパーエレクトロニクス
主成分のセルロースが大量に含まれた紙本来の特性を利用したエレクトロニクス。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究・報道について)
東北大学未来科学技術共同研究センター
リサーチフェロー 福原幹夫
電話番号: 080-1069-4789
メール:mikio.fukuhara.b2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学未来科学技術共同研究センター 広報
電話番号: 022-795-4004
メール:niche-pr*niche.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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