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里見進総長

新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年を少し振り返ってみたいと思います。
 地下鉄東西線の開通は正確には一昨年の出来事になりますが、本格的な稼働は昨年と言ってもよいと思います。13ある駅のうち4駅が東北大学のキャンパスに関連しており、一番遠い青葉山駅でも仙台駅からわずかに9分であることを考えると、本学は地下鉄の開通によって、複数のキャンパスを持つ大学としては我が国で一番コンパクトにまとまった大学になったと言えます。東日本大震災からの復興やキャンパス移転も順調に進み、昨年は27,000平米を超える農学研究科の本館や動物実験棟、農学分館と青葉山全体の図書館機能を兼ね備えたアカデミック・サイエンスコモンズ、環境科学研究棟などが竣工しました。現在農学研究科は引越しの真最中であり、4月からは新キャンパスでの本格的な教育・研究を開始します。
 記念すべき出来事としては、天皇・皇后両陛下の本学への行幸啓がありました。これは両陛下が日本循環器病学会の開催に合わせて、東日本大震災時に多大な被害を受けた本学の復興を見たいと強く希望されて実現したものです。川内萩ホールの一室で原理事と一緒に、「東北大学災害復興新生研究機構」の取り組みを中心にお話をさせていただきました。
 震災から6年目になり災害復興新生研究機構で実施されてきた8大プロジェクトの半数以上は予算が停止されたり減額されたりしています。その様な中で、災害科学国際研究所は国連のUNDPとの協力により、世界の防災に関する統計センターとしての活動をスタートさせました。今後は寄せられたデータを解析し、各国の事情にあった防災政策の提言等を行うことで世界的な貢献をする組織に成長すると期待されます。平成29年度予算では、これまでの補助金事業から一般財源に移行しましたので、今後は安定した組織として運営できるようになります。
 東北メディカル・メガバンク機構は医療情報と遺伝子情報を組み合わせることで、究極の個別化医療を実現することを目指しております。その基本として15万人分の遺伝子情報の集積を進めてきましたが、3年半の短期間で無事に完遂しております。そのうち7万人分は3世代コホート(祖父母、両親、孫の3世代)として集積しましたが、この事業には宮城県の妊婦さんの実に2人に1人が賛同し参加してくださいました。医学系研究科や病院をはじめとする本学の医学・医療が、地域の皆さまから深く信頼されている証だと嬉しくまた誇りに感じております。
 このほかマリンサイエンスや原子炉の廃炉に関するプロジェクト研究にも多くの研究者や学生が参画しております。今年も大きな成果を上げてくれることを期待いたします。
 昨年は海外の大学との交流も盛んに行われました。6月以降10カ国ほどの国を訪問し、学術交流協定等を締結しました。特に8月後半から10月初旬はほぼ毎週海外に出かけておりました。プーチン大統領の訪日に合わせて締結したロシアとの大学間協定については、首相官邸で協定書の交換式が行われました。その式典でプーチン大統領と直接お会いし、握手をしたのも忘れられない出来事です。
 一昨年にスピントロニクス研究分野からスタートした国際共同大学院構想は、昨年、環境・地球科学分野が加わりさらに充実してきました。今年は宇宙創成物理学、データ科学の2分野が開講されますので、また一歩前進します。
 産学連携でもこれまでの取り組みが評価されました。8月に行われた産学官連携功労者表彰で、国際集積エレクトロニクス研究開発センターが内閣総理大臣賞、東北大学のファンドが出資して立ち上げたベンチャー企業(マグネット・インスティテュート社)が文部科学大臣賞を受賞しました。全体で十数件の表彰でしたので、本学は2件、しかも最高の表彰を受けたことは大変喜ばしいことでした。本年も是非頑張ってほしいものです。

今年4月に農学研究科が新キャンパスでの教育・研究を開始することで、この数年間実施してきたキャンパス移転や震災からの復興事業での建築は一段落します。今後予定されているものとしては、100名規模の保育所の建設があります。この建物は青葉山駅前の一等地に建てられコンビニエンスストアやレストランも併設することになっています。また、海外からの留学生と日本人学生が混住するユニバーシティーハウスを、新キャンパスに700人から750人規模で建設する計画が進められています。この二つの計画は設計図もほぼ出来上がり今年の早い時期に着工し、保育所は30年3月、ユニバーシティーハウスは31年3月の竣工を目指しています。
 病院では現在新しい中央診療棟の建設が進行しています。完成は30年3月で、21世紀にふさわしい近代的な手術場の創出、ICU、高度救命救急センターの拡充が図られることになっています。また、ある篤志家の支援を受けて120名を収容する保育所を建設することになりました。現在の保育所は25名程度の規模ですので大幅な増員になり、福利厚生が一段充実すると期待されます。
 今年の予算編成で、大学にとって教育に関して良い知らせが届きました。高度教養教育・学生支援機構の財源が一般予算化されたことです。これまでの大学の取り組みが高く評価された結果であり、本機構に所属する先生方は身分が安定しますので、ますます張り切ってよりよい教育を創設してくれるものと期待しております。これまで作ってきた国際標準の教育がより充実するようにしたいものです。
 研究面ではWPI-AIMR事業への政府からの支援が一部継続することになりました。AIMRはこの10年間で材料科学の分野では世界をリードする組織として認知され、また本学の組織改編の推進役としても重要な働きをしてきました。今後は高等研究機構の最初の組織として存続させるように大学としても支援をしていきます。高等研究機構には今後いくつかの分野を組み入れ、時間的余裕を持って研究に専念する体制を作っていきたいと考えています。そのためには高等研究機構に配属される研究者が移行しやすいように、研究科や研究所との人事交流がスムーズになる仕組みが必要です。今年はその体制の整備に努めたいと思います。
 産学連携は今後の大学運営に大きなウェイトを占めてきます。これまで個々の先生方が企業と契約を結んで実施してきた共同研究の在り方を変更し、大学全体で取り組む体制に変えていきます。共同研究の規模を大きくし大きな予算獲得に結び付けると同時に、知財戦略も充実させなければなりません。個々の研究者の自由度を損なうことがないように進めていきます。
 「社会にインパクトのある研究」の議論は今後の大学における研究がどの様な理念の下で実施されるべきかを考える良い機会を提供していると思います。多くの矛盾が露出し問題が山積しつつある現代社会において、大学は何ができるのか、この時期に大学全体で議論することは大学の財産になると信じています。
 これらのことはすべて今年の大きなプロジェクトである「指定国立大学」の選定事業に結び付いていきます。3月の応募に向けて全学で取り組んでいきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

昨年は残念ながら七大戦4連覇の千載一遇のチャンスをものにすることができませんでした。今年は新しい連覇へのスタートの年になります。プールのある新しい課外活動施設や陸上競技場、サッカーやアメフトの練習場などの整備が進みました。学生諸君には文化部や体育部で青春を謳歌しつつ活躍することを期待しています。

今年の干支は酉です。酉はお酒に関連のある文字で、お酒を入れる細長い口の容器を意味しており、収穫した穀物からお酒を作ること、転じて酉年は豊かな成果が上がる年と言われています。私の総長としての任期も平成30年3月末までの残り一年余となりました。酉年にちなんで今年は6年間の最後の仕上げの年、きちんとした結果を残す年になるようにしたいと思います。

平成29年1月4日


東北大学総長

里見 進

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