Column
東北大学理学研究科 山下教授
Column No.019 自然科学はなぜ面白いか?

2007/ 1/19


 私は研究会や学会や講義の際に、研究者や院生に「自然科学はなぜ面白いですか?」と聞きます。いろいろな答えが返ってきます。「新しい物性を示す化合物を合成できるから」、「常識を覆すことが出来るから」、「新しい反応を見いだせるから」、「新しい現象を発見できるから」、「新しい理論を打ち立てることが出来るから」「新しい測定法を確立出来るから」などなど多彩です。いずれも正解です。

 しかし、私は人生が1回しかない中で「自然科学」という職業を選び、それでメシを食っている以上、もう少し自分も他の分野の研究者も含めて普遍的な答えが必要ではないか考えてきました。その結果、結論を得ることが出来ました。すなわち、「自然科学」は「真理(真実)」の前に「階級制がない」から面白い、という結論です。例えば、ノーベル賞学者が言ったことが間違いで、我々凡人が言ったことが正しいことが山ほど有ります。また、大学院生が言ったことが正しくて、教授が言ったことが間違いであったことなどいくらでも有ります。このように「自然科学」は「真理」の前では「階級制」は有りません。

 しかし、世の中(社会)は違います。階級制社会です。例えば、大企業の中で社員が社長に向かって、「社長、それは間違っています!!」というと、そのことが正しくても、多くの場合、その社員は左遷されるかクビになると思います。社会(会社)は階級制だからです。社長は絶対的な権力をもっているわけです。権力の前では真理(真実)は無力です。その意味でこの世で、「階級制」のないのが「自然科学」です。だから我々は「自然科学」に全力で打ち込むことが出来るのです。人生を賭けることが出来るのです。

 もう一つ「自然科学」が面白い理由は、「自然科学」は「歴史」を作ることが出来ることです。当然、政治も「歴史」を作ります。しかしその評価は時代によって、また評論家によっても変わります。例えば「江戸時代」に関して言えば、ある評論家は「江戸時代は200年以上も戦争をしなかったので良い時代であった」と評しますが、別の評論家は「江戸時代に鎖国をしていたために欧米に比べて科学や文化が遅れた」と評します。つまり「歴史」は評論家によって評価が割れるわけです。しかし、例えば科学の中で「地動説」を考えてみると、これは時代が変わってもその評価(真実)は変わりません。まさに、「自然科学」は歴史を作るわけです。歴史上、評価は変わらないわけです。

 以上の2点が「自然科学」が面白い理由であると言う結論に達しました。主観的すぎますかね?

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