インタビュー東北大学


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Interview-P.03

研究と教育

mark東北大学の理念は「研究第一主義・門戸開放」と言われて来ましたが、 世間一般には、その表現はなかなか理解されない部分です。 研究と教育 の関係についてどう考えられますか?

 私は私自身が先生達からどうされてきたかをいつも考えていました。私は学生達にやりたいことを自由にやらせ、しかし外側からゆっくり手綱を締めつつ、強制しないで、自ら考えた方向に伸ばしてあげるという形で自由にやらせることを方針としています。
  研究者になりたい学生達には、研究者としての基本的な考えを叩き込みますが、学生にはやりたいことを自由にやらせています。それが教育の正しい方法だと思っています。

やはり研究第一主義ということですか?

 門戸開放、研究第一主義の理念としては、研究者はやりたいことをできる環境にあることが大きいと思います。自分に関しては、自分がやりたことだけを、それこそ道なき分野ではありましたが、自由にやってこられたと思っています。 学生にも自由に研究をやらせようと思う先生は少ないと思いますが。
  他大学を含めて教育の考え方は同じだと思うのですが、学生を先生がやりたいことをするための"パーツ"として使うというところはなきにしもあらずです。

大学の外にある大規模な研究所というのは、大学院生をプロジェクトに組み込むという考えがあり、学生は与えられたことをやればいいという考えになりがちで、うまく育っていないような気がしますが。

  歯車の1つにするのは大反対ですが、怖いのは今の学生が実は"歯車のひとつ"になることを喜びます。彼らにとって住みやすいですからね。逆に私のように自由にやらせる先生の下にいる学生の方がストレスがあると思います。"自由というのは辛い"という事をかみ締めていると思います。

しかし、それができるからこそ大学ですよね?

私はその中で生き残った人間が、次の指導者となって研究を進めていくと信じています。



多様な連携

社会貢献に関しての質問ですが、企業や自治体との連携で研究を進める具体的計画はお持ちですか?

  大学は「人の脳を知る」という技術を持っていますし、人の脳研究はいくらでも応用がきくものだと思っていますので、産業界との接点はいくらでもあると思います。私自身は"教育と福祉"に積極的に生かしています。ガス会社からは"人が火を使うことに意味があるかを知る"という研究を、私の研究に関心を持ち同調してくれたIT関係ですと"脳がきちんと働くようなソフトウェア"のあり方を考えるなど、4月には仙台の民放ローカル局で"見ているだけで脳が働く"という番組が、私の監修と共同研究の中で始まります。

マスメディアも違う価値観を見い出し、脳について考え出したわけですね。

  今までと違う価値観を大学が発信したことで、考え出したということです。

ドリルはアルツハイマー型痴呆患者の脳機能改善に役立つと本に書かれていましたが、今までの常識では脳機能の改善など不可能と思っていたことが可能になってくるわけですね。

 そうです。私は世界ではじめて脳科学の科学的知識に基づくトップダウン的な痴呆症患者への介入方法を提案しました。従来、人の脳というのは大事なものでありながら目に見えない部分だったので、心理学的なアプローチが中心に行われてきました。しかし、科学的なデータの裏づけのない心理学的手法のみでは、限界があったのです。

心理学の手法と先生の方法は違いますが、将来一緒になればより研究が進むのでは?

 実際に融合は始まっています。東北大学でも医学部だけではなく国際文化研究科の言語学チームや心理学チーム、哲学、工学の学生も研究を行っています。ジャンルを超えて脳を核にした研究が進んでいると言えます。

どんな研究分野でも、東北大学だと短期間で実現していくような気がしますが、東北大学のパワーをうまく利用するためのコーディネーター(とりまとめ役)が必要ではないでしょうか?また、コーディネーターを育てる教育も必要な気がしますが。

 難しいですね。それは才能なのか環境なのか・・・よくわかりません。私は自分に自信がないので、人との連携でやっています。自分ができることは限られているというのを自覚しているので、そうなると人の力を借りなければなりません。 期限のある研究だと、その期限内に終わらせるためには自然に誰かと一緒にやるという発想になりますね。

産学連携となると、企業から「いつまでに」という希望があるのではないですか?

 企業との関係で言えば、企業を私が使っていると思っています。企業と「こういう研究したいね」となれば、こちらは大学の知識と装置を提供し、企業は研究員を出します。 研究結果を考えるのは共同でやりますが企業でさらに研究を続けていただき、その先は企業側でやってくださいというやり方をしています。
  純然たる営利目的ならお断りしていますが、発見した新しい法則を世の中に役立てようという点でセレクションをかけています。

異年齢が語り合うという事をどう思いますか。

  実際、小学校を借りて高齢者の勉強会を行っています。自治体と連携し、地域の高齢者と小学生が交流できる場を設けています。高齢者の機能向上が目的なのですが、ただ会わせるだけではコミュニケーションはできないのです。一緒に同じものを学習すると一体感や連帯感を持つようになり、自然なコミュニケーションが生まれます。
  高齢者にとっても昔ながらの子育てが甦りますし、子供にとっても体力のない人生の先輩をおもんばかるという動きが生まれます。

  自治体にはコストパフォーマンスの計算だけではなく、様々な面での計算も行っています。 このような交流というのは、地域のNPOが中心にならないとダメなのです。国や企業を期待するのではなく、自分達で作っていくという気持ちが大切だと思います。その中で私達は、脳科学の知識で多少お手伝いできるかなという面で脳科学者が一緒になってそのモデルを考えるまでが大学の仕事だと思っています。

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