Interview-P.04
研究と教育
先生は研究と教育の関係についてどのように考えられておられますか?
教育でもいろいろな段階があると思うのです。例えば本当の基礎を学ばないと駄目とか。東北大学が目指している研究第一主義的な、あるいは実学主義的な方向は、「基礎が重要であればあるほど将来それが大きく花開く」と言えます。
東北大学のもう1つの理念「門戸開放」という点からは、外国から非常に優秀な人をどんどん受け入れる状況を作り出しているわけで、研究と教育を一体化することが重要と考えます。東北大学が特徴としようとしている人材育成においては、学生が基礎を学び、優秀な研究者と直に触れることで、考え方、人生観なり、自分を見つめる機会を持つ・・・それが、東北大学が世界のトップに立てるような、将来を担う人材を育成する特徴だと思います。東北大学の「研究第一主義」「実学主義」においては、個々の先生から何かを得られる環境が作られていると思います。そういう環境を創り出すことが東北大学としての研究と教育の目指すべき方向の1つだと思っています。
先生が大学院に入って、自由にやらせてもらえたとの事ですが、国立の研究所などでは、大きなプロジェクトに学生が組み入れられてしまう傾向が見られますが。
我々も大きなプロジェクトを持っていまして、プロジェクトの研究員が研究室内に多数いるために、研究室が狭くなり、学生さんには多少申し訳ないなと思う気持ちもあります。その代わり学生は研究員との討論を始め、より多くの自由な時間を持つことができ、また経費に関しては一切不自由を感じさせないようにし、やりたい人はどんどんやれる環境作りに努めています。
自分で自由に討論し考え、時間とお金を与えられ、おそらく最新の装置も整備されている環境が作り出されています。つまり、先生方が学生に頑張りなさいと言える環境にあると思います。
自分も若いときは自由に研究が出来る環境を与えられ、研究成果を得る努力が空回りして、大変に回り道をしました。しかし、若い時に回り道をすれば、次は回り道しないでストレートに行く道の習得につながるわけです。最初から効率を重視してストレートに行く道を教えてしまうと、将来回り道をやってしまう可能性がありますので、若いときの回り道は大いにやるべきであり、またそれを許容する雰囲気が重要だと思うのです。 でも、将来の不安が先に立って日々の研究に身が入らなくなり、研究への興味がわかないようなことになったりする若者が多くなると、世界一級の研究者が東北大学から輩出することが困難になると思います。
先生の生き方を伺うと、将来の不安などなかったように感じられますが。
将来の不安が先に立ち、現在の課題などが手につかなくなる性格の人は、将来を担う一級の研究者としての人材に必ずしも適していないように思っています。 ただし、先生も学生を全くほったらかしにしているということではないですよ。我々は2ヶ月に1、2回はきちんとしたミーティングを行い、将来の生き方などについても話し合いの機会をもっています。
社会貢献に関してはどうお考えですか?
89年目を迎えている金研では、実学精神を具現できる体制が整えられていますが、社会貢献のみに捕らわれてはいけないと思っています。 各先生方が社会貢献に追いまくられるというものではなく、東北大学金研で自由に研究してきた基礎成果が認められ、産業に大いに生かされるという意味で、社会貢献は重要であり、また実学精神のもとに新しい学術分野を切り拓くといった点から社会貢献は果たせると思います。
金属材料が数千年の歴史を持ち、人類に貢献してきましたが、金属ガラスが新しい文明を創るといった意味で社会貢献を捉えられているわけですね?
そうですね。何故金属元素のみで構成されている多元系合金液体が融点以下でも結晶変態を起こさずにガラス構造として固化してしまうのか、何故高強度でありながら大きなたわみ変形が起こるのかという実用化だけではない、もっと基礎科学面においても知的好奇心を満たして知的水準を上げることも立派な社会貢献だと思います。 確固たる学術成果を基礎とした研究室を構築し、世界オンリー・ワン的実績を挙げ、そのような環境に身を置いた学生を世に送り、研究と教育の両面から企業から頼られるといった点での社会貢献も重要であると思います。
医学や生物に関する面での応用が出てくると思うのですが?
当然そうですね。我々の研究室には、教員、学生、研究生など総勢70名がおり、企業が40社ほど入っていますので、共同研究や社会のニーズが入りやすく社会貢献しやすい環境にあると思っています。医学や生物関連のニーズを知ることによって、独自の研究成果に基づいたしっかりした土台がある場合には応用展開が可能であり、花開いていく可能性は充分にあると思います。
東北大学のホームページ上で、社会の人にこんなことを行っているのだとわかるような仕組みにもっていきたいと思っていますが。
技術相談や特許にしても、我々の研究室の論文、解説のホームページを見て問い合わせが数多くあります。これがきっかけとなって共同研究さらには社会貢献に繋がれば良いと思っていますので、そういう点でも分かり易く紹介することは必要だと思います。
今の時代をどのように捉えられていますか?
価値観がいろいろ多様化している時代といえますが、そういう時代こそ時代の流れに影響されない、基礎がしっかりした学生・研究者を育てることが1つの道と思っています。そうなると、時代に流されず、その時代にどんなに周囲の状況が変化しても対応でき発展させていけると思います。
東北大学の中では多種・多様な研究がされているわけですから、どこかで陽があたり、発展していく分野が次々と交替で出てくれば良いと思います。
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