日本化学会賞受賞に関する一問一答
Q1, 日本化学会賞を受賞されたご感想をお聞かせ下さい。
「シガトキシン類の全合成を中心とした生理活性天然物の化学的研究」に対する業績に対して日本化学会賞を頂きましたが、研究は私一人ではできません。
受賞は私個人に対する賞ではなく、ひとえにこれまで研究を共にしてくれた若い職員と大学院学生さんの努力の成果が認められたことであり、素直に喜んでいます。また、学内外の研究者との共同研究によって研究が幅広く深く発展しました。協力して下さった先生方にも深く感謝しています。
Q2, 受賞にいたるまでの経緯をお聞かせ下さい。(研究・開発を始めようと思ったきっかけ、完成まで の苦労・挫折・喜びなど)
世界で毎年2万人をこえる世界最大規模の海産物(熱帯亜熱帯のサンゴ礁海域の魚類)食中毒“シガテラ”の原因毒シガトキシンの全合成が受賞の主な業績ですが、この全合成は、中毒の予防法や治療法の開発という点からも強く待ち望まれて来ました。極微量しか天然から抽出できないシガトキシンの構造が1989年に東北大農学部の安元先生によって決定されたこともあり、「仙台発の、科学として面白い、しかも世の中に役立つ研究をしたい」と思って研究を始めました。
当時は、正直言って勝算はありませんでした。しかし、若い職員と大学院学生さんの努力のお陰で、私達は3 nmもあるこの巨大分子を効率良く、しかも合成の最終段階まで無毒なまま世界で始めて全合成することに成功しました。研究開始から完成まで12年余を要しました。しかし、現在も、まだまだ合成法の未熟なところが残っており、改良に改良を重ねて、もっともっと効率良く合成できるように新化学合成法の研究を進めています。また、全合成の成功は、研究の終点ではなく、抗体作製による中毒予防や、新たな神経科学の展開への出発点であると考えています。実際、それらの学際的研究も、人工合成したシガトキシンや合成中間体を用いた共同研究として大いに発展しています。
Q3, 具体的には、日常生活のどのような部分に活用が期待されるでしょうか。
シガトキシン抗体を使った簡便なシガトキシン検出キットが開発できれば、世界中で起きているシガテラ中毒を予防することができます。早く開発して欲しいという声が世界中から寄せられています。
Q4, 最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。
化学は、科学の基盤科学と考えています。困難な問題に挑戦して、努力と執念で解決してゆく面白さを若い人達と共有して行きたいと思います。
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+++平間研究室の実験室風景+++
教授と学生さんの距離がとても近く明るい研究室内。
この雰囲気の中から、素晴らしい研究成果が生まれています。