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 医薬品開発に役立つ有機合成 徳山教授

Staff Activity No.024 医薬品開発に役立つ有機合成  
 
2007/12/13

 医薬の“種”となる化合物はどのように見いだされるのでしょうか。最近では、コンピューターモデリングを使って人工的に設計する手法や、ロボットを使って数十万個の化合物ライブラリーを用いた迅速スクリーニングも行われています。しかしながらそれらの手法にも限界が見え始め、自然界から見出された多彩な構造の化合物を誘導体化し、薬として世に送り出す従来の方法の重要性が再認識されています。ここで得られた“種”を薬へと育てるためには、様々な誘導体を自由に化学合成できるかどうかが鍵になります。


図1.ユーディストミンの構造 私たちのグループでは、医薬の“種”の宝庫である天然から得られる化合物のなかでも、医薬に多く見られる、窒素、硫黄などのヘテロ元素を含んだアルカロイドに着目し合成研究を行っています。例えば、ユーディストミンは、カリブ海のホヤから単離された、強力な抗腫瘍活性および抗ウイルス活性を示す化合物です(図1)。天然からは微量しか得られないため、世界的な製薬会社を含めた多くのグループが医薬としての開発を睨み合成研究を行いました。一見合成が簡単に見えますが、窒素、酸素、硫黄を含む7員環の形成が極めて困難で、効率的な合成を阻んでいました。我々は、独自のアイデアでこの7員環の新しい合成法の開発に成功し、それをもとに、医薬開発にも応用できる実用的な合成経路を確立しました。その結果、天然から得られた化合物の活性をはるかに凌ぐ新規化合物を含む、様々な誘導体の合成を行うことができました。


 また、ビンブラスチンはキョウチクトウ科の植物から単離される天然物であり、悪性リンパ腫などに効果がある抗腫瘍剤として使われています。しかし、より副作用の少ない新たな薬剤を求めて研究が続けられています。すでに天然物の化学変換で誘導可能な化合物はほぼ研究されつくされており、人工合成によってより優れた化合物を見出すことが求められています。我々は、まず、ビンブラスチンを一から合成する経路を確立し、さらに、改良を加えて天然物から誘導困難な新たな化合物群を合成することに成功しています(図2)。

図2.ビンブラスチンの全合成と誘導体の合成


 我々は、医薬の“種”となるような複雑な化合物を拾い出し、簡単かつ大量に合成できる実用的な合成経路の確立を目指して研究を行っています。それには、常識を打ち破る新規合成反応の開発や合成デザインが必要であり、その開発を通して有機合成化学のフロンティアーの拡大に努めています。

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