基礎科学
2018年9月21日 第156回サイエンスカフェ
日本人の二人から三人に一人はがんになると言われるほど、がんは私たちにとって厄介な病気の一つです。本講演では前立腺がんのある治療法に関する数学的取り組みの一端を紹介します。「何の役に立つの?」と言われがちな数学ですが、皆さんが知らない数学の一面を体験してもらえたらと思います。
2018年9月21日 第156回サイエンスカフェ
数学はお医者さんになれるか?~がんのある治療法と数学の関わり~
講師:岡部 真也 東北大学大学院理学研究科 准教授
プロフィール
栃木生まれ。2006年に博士(理学)を東北大学大学院理学研究科にて取得。2006年に北海道大学大学院理学研究院COE学術研究員、2007年に東北大学大学院理学研究科助教、2008年岩手大学人文社会科学部准教授、2011年より東北大学大学院理学研究科准教授、現在に至る。2015年に日本数学会函数方程式論分科会福原賞を受賞。専門は非線形解析学、変分法。
開催情報
開催日:2018年9月21日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
日本人の二人から三人に一人はがんになると言われるほど、がんは私たちにとって厄介な病気の一つです。本講演では前立腺がんのある治療法に関する数学的取り組みの一端を紹介します。「何の役に立つの?」と言われがちな数学ですが、皆さんが知らない数学の一面を体験してもらえたらと思います。
Q&A
Q. 今日の数理モデルではAIの減はないと思います。ということは病理が 減少することはないのでしょうか。
A. 今回お話しした設定では、AI細胞はAD細胞との競合によって減少し得る、ということを数理モデルは表現しています。もちろん、AI細胞はアンドロゲン濃度が正常値に近い場合にアポトーシス(細胞死)する、という設定をモデルに入れることもできます。ただ、どの設定が実際の現象のよい近似となり得るかについては、様々な試行錯誤が必要であり、一朝一夕にわかるものではないと思います。
Q. 数理モデルをつくるにあたり、サイクルが必要となると、時間がかかりすぎるのではないか。
A. 数理モデルは実際の現象のよい近似となり得ることが期待できますが、一般には、一切の誤差なしに記述できるというものではありません。今回お話した癌の治療に関わる問題であるならば、不十分なものを拙速に与えることに意味はないと考えています。科学の進歩には一般に時間が必要であると思います。大切なことは、諦めることなく絶えず前進し、問題の解決に繋がる研究を蓄積し続けることではないでしょうか。
当日の様子