2014年8月22日 第107回サイエンスカフェ
小さな粒子ニュートリノに秘められた大きな宇宙の謎を解く鍵
講師:井上 邦雄 東北大学ニュートリノ科学研究センター センター長(教授)
プロフィール
1965年大阪府生まれ。東京大学博士(理学)。東京大学宇宙線研究所助手を経て、東北大学ニュートリノ科学研究センターへ。カミオカンデ、スーパーカミオカンデ、カムランドとニュートリノ研究一筋で、地下施設のある岐阜県飛騨市神岡町を第2の故郷にして、「真理の探究」は人間だけに許された「人生の目的」と、現在はカムランド禅実験に注力。原子炉ニュートリノ振動の精密測定で日本学術振興会賞、地球ニュートリノの観測で仁科記念賞、などを受賞。
開催情報
開催日:2014年8月22日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
宇宙に満ちるニュートリノは巨大天体すらすり抜けます。この性質を利用して地球内部の透視が可能になりました。一方、電気を帯びていないニュートリノの特異な性質が、「反物質が無い宇宙」という宇宙・素粒子の大きな謎を説明すると期待されています。
Q&A
電気帯びないニュートリノが「反物質がない宇宙」のなぞとはわかりやすく言うとどんなことか?
電気を帯びると物質と反物質で電荷の符号が異なるためかならず異なる粒子となり、入れ替わることはできないため、物質量と反物質量は必ず同数となる。電気を帯びないニュートリノは物質と反物質が同じかもしれず、その場合、物質と反物質が入れ替わることも可能である。つまり物質量と反物質量に差を生み出す要件を備えている。
太陽ニュートリノの観測精度が上がると太陽の将来の進化についてより詳しく解明されると期待されますか?
現在太陽表面の組成と太陽の振動の様子に矛盾があることが問題になっています。太陽はごく標準的な星だと思っていましたが、これまでの理解に修正を加える必要があるかもしれません。太陽ニュートリノの観測を通して、このような問題が解決できると期待されています。つまり、将来の進化を詳しく解明することに大いに貢献できると思っています。
当日の様子