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発見は未知ノ奥にあり。 ー東北大学のこれまで、これから

東北大学のこれから、東北地域から日本、世界へと飛躍するビジョンを第22代総長の大野英男が語るインタビューシリーズ第1回。

聞き手は、本学経営協議会委員であり日本経済新聞社参与の長田公平氏です。

大野第22代総長インタビュー Vol.1
「世界に冠たる研究大学になろう」
2023年4月

第22代東北大学総長 大野英男

聞き手|日本経済新聞社参与 
長田公平(東北大学経営協議会委員)

第22代東北大学総長 大野英男

大野総長は東北大学を変革するぞ、と宣言しています。ひとことで言うと、どう変えていくのですか。

それは難しい(笑い)。ですが、あえてまとめると、まずは東北大学の研究のレベルを飛躍的に高める。これからは研究の成果で、欧米や中国などの世界の有力大学と肩を並べ、競い合えるような組織になろうということです。

確かに、海外の有力大学が果実を出しているのに対し、日本の大学は低調で、残念ながら、それは論文の引用数など数字にはっきりと表れていますね。

国公立大学は研究、特に基礎的な研究を担っているわけですが、ここ20年ほどを振り返ると、研究者が自身の研究に振り向ける時間が確保できなくなってしまった。これは私の実体験でもあります。今回の改革は、研究者が自らの研究に、もっと多くの時間を割けるようになろう、と考えています。

外から見ていると、日本の大学は残念ながら資金力もないし、国際化も遅れ、非常に閉鎖的に見えますね。

だから変革しなければならない。まずは研究力の向上と言いましたが、我々の目指すべきものは「社会価値の創造」と考えています。具体的には1つは基礎研究であり、イノベーションの創出、2つ目は、災害科学など社会課題の解決、これは地域への貢献という側面でもあります。東日本大震災の経験をさらに積み上げ、地域の活性化に貢献していきたい。そして、3つ目は優れた学生を育てる教育の場としての大学です。これは今でも東北大学の強みですが、もう一段レベルアップを図る。この3つで世界のトップを目指します。

ハードルは高そうですね。具体的にどうやって乗り越えるのですか。

まず、原動力となるのが国際化、世界に開かれた大学になることです。海外から優秀な研究者を招聘し、一方で、東北大学の研究者をどんどん海外へ出していく。これで、研究者の海外での人脈が広がり、国際的な研究の輪の中にも入っていける。論文の引用数もこういう研究者のつながりから、必ず増えていきます。

海外へ派遣する研究者の数、論文の引用数ともに今後10年で大きく拡大するというかなり高い目標を掲げています。

体制が整備できれば、東北大学の潜在力が表に出てきます。そういう意味で、今回、国が始める「国際卓越研究大学」の指定をうけることは極めて重要なチャンス、ポイントと考えています。

認められると、政府が新設した10兆円の「大学ファンド」をもとに、その運用益の年間3000億円が大学に助成される計画ですね。仮に5校が認定されるとしたら、1校当たり年間600億円の助成が得られる。申請は3月末に締め切られ10校が名乗りを上げました。今年秋には最初の認定校が決まると言われています。

もちろん、東北大学は認定を目指します。選定の基準は、国際的な研究力に加えて、大学経営の独立性、独り立ちを求めています。自ら資金を調達し、研究で成果をあげ、たくましく自力で成長していくことを期待されています。

青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)に建設中の次世代放射光施設ナノテラス

意欲的な財務戦略、資金の調達も認定の条件のようです。

東北大学初代学長 澤柳政太郎

我々はすでに、100億円の大学債も発行し、自己資金の調達力を高めています。また、青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)に建設中の次世代放射光施設ナノテラスについて、140社を超える企業が自己資金を投じて参画意向を表明しており、参画企業群との産学共創も展開することなどで、持続的な財政基盤の成長を実現していきます。
 こうした新たな資金を活用し、海外との研究者の交流を活発にし、若手や女性の研究者のサポートを手厚くし、学生の海外への派遣も思い切って増やす。さらに、これは非常に大切なことですが、研究のサポート部隊も充実する。環境を整えると言うことで、研究大学として大きく羽ばたいていきたい。東北大学の初代学長の澤柳政太郎は、「大学は研究をする場であり、われわれは、世界に退けを取らない大学になるんだ」と言った。再び、先頭を切って走りたい。

東北大学初代学長
澤柳政太郎

一方で、大学自身、体質改善が必要なところもあるのではないですか。

先端的な研究開発をやる場合に、いかに効率的な組織になるのか。大学が外から批判される大きな問題は、部局の壁が言われます。例えばの話しですが、工学部や農学部が連携して大きなプロジェクトを進めていく必要があるならば、合意形成を図りながら優秀な人員や資金を1つのプロジェクトに寄せると言うようなことが必要になってくると思っています。
 大学の場合、やはり改革が必要なのはパフォーマンス、組織が効率的に動いていない。世界第3位の経済大国にそういう大学しかないと言うのは、やはり問題だと受け止めなければいけない。どういう道筋で我々が世界に冠たる研究大学になるのか、それを考え、実行していくのが、与えられた使命だと認識しています。

相当な決意、強い意志が必要ですね。かなり困難な道のりだと思いますが。

やるべき事は分かっています。あとはどれぐらいのスピードで大学の皆さん、そして関係者の皆さんにそれを理解していただけるかですね。あらゆる機会をとらえてお話をする、現場が納得してくれないといけないので対話を進める。それが何といっても大事です。
 繰り返しになりますが、自己資金の調達や国からのお金はエンジンを起動させるのに必要です。それによって研究の環境、人の配置、交流などが動き始め、国際化も進展し、挑戦的研究や重要論文が増え、成果が上がり、それが学生や地域の活性化にもつながっていくことは間違いありません。

何よりも、東北大学の皆さんがそう思わないとダメですね。成果を出すためには。

大丈夫です。皆さん研究をやりたくて大学にいるわけですからね。

次回は、もう少し具体的な施策、工程表などを伺います。

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