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「メンデルの遺伝の法則」に新しい分子メカニズム発見 (生命科学研究科 渡辺正夫教授)

1865年にメンデルが発表した「遺伝の法則」に「優性の法則」というのがあり、優性対立遺伝子と劣性対立遺伝子をそれぞれの両親から1対ずつもらうと、優性の形質(性質)が表現型として表れます。これが先の「優性の法則」であり、1865年にメンデルが発表した遺伝の法則の1つです。この法則については、劣性対立遺伝子がその機能を消失していることが原因であるという理解がされていました。

われわれは、対立遺伝子が3つ以上ある「複対立遺伝子」間での優劣性に着目し、その代表例であるアブラナ科植物の自家不和合性制御遺伝子、SP11の発現を調査することで新規な優劣性発現メカニズムを明らかにしました。実際には、SP11について、優性、劣性対立遺伝子の遺伝子構造を比較したところ、劣性SP11対立遺伝子発現制御領域と高い相同性のある逆反復配列が優性SP11対立遺伝子の周辺に存在していることを発見しました。この配列からは、低分子RNA(small RNA, sRNA)が、SP11と同様に、葯・タペート細胞特異的に発現していました。この低分子RNAが劣性対立SP11遺伝子の相同領域のDNAメチル化を誘導し、後天的に遺伝子発現を抑制していました。

この成果は、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・高山誠司教授、東北大学大学院生命科学研究科・渡辺正夫教授らで行った共同研究によるものです。

メンデルが遺伝の法則を発表してから100年以上ですが、新たなコンセプトを提唱でき、また、この分子メカニズムを利用することで、遺伝子発現を自由にオン・オフでき、品種改良にも新しい概念を導入できる可能性があります。

本研究は、科学研究費補助金、特定領域研究・植物ゲノム障壁「受粉反応時に「ゲノム障壁」を誘起する花粉・柱頭因子の分子遺伝学的解析」(研究代表者:渡辺正夫)、日本学術振興会科学研究費若手研究(S)「アブラナ科植物の自家不和合性における自己・非自己識別機構の分子基盤」(研究代表者:渡辺正夫)の一環として得られたものです。

本研究成果は、英国の科学雑誌「Nature」(http://www.nature.com/nature/index.html)に、日本時間の8月19日午前2時 (ロンドン時間の8月18日午後6時)に掲載されます。

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