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応用物理学専攻・藤原巧教授らの研究グループは、高い発光効率を示す希土類元素フリーの低融点ガラス作製に成功しました

応用物理学専攻・正井博和助教(現:京都大学化学研究所助教)と藤原巧教授らの研究グループは、旭硝子株式会社、京都大学化学研究所・横尾俊信教授との共同研究により、希土類元素を含むことなく、高い発光効率を示す低融点ガラスの作製に成功した。
低融点ガラスは、作業温度が500度以下のガラスを指し、電子部品の被覆材料などとして用いられてきた。最近では、封止材料の役割に加えて、低融点ガラスを補色発光源としても利用し、白色発光ダイオードへ応用する試みも活発化している。酸化物ガラスの発光効率は一般に低いため、ガラスを発光材料として使用するためには、通常、希土類元素などの発光イオンをガラス中に分散させる手法や発光特性を有する微結晶をガラスから析出させる手法が用いられている。
今回、従来の希土類元素を含むガラス材料に匹敵する発光効率を示す、酸化スズを含有するリン酸塩低融点ガラスの作製に初めて成功した。作製されたガラスは希土類元素を含むことなく、紫外線を照射することにより高効率(最大で約90%)な青色発光を示した。また、昇温しガラスの成形加工が可能な温度を経ても、発光特性が大きく変化しないことを実証した。
この結果は、新規な封止および発光材料としての応用展開を拓くものである。省エネ型の照明として、更なる発展が見込まれる発光ダイオード(LED)分野において、①強い紫外線のダメージにより劣化する従来の有機系封止材料を置き換える材料となり得ること、②希土類フリーにより、省資源的な観点から安価で簡便な発光材料となること、さらに、③発光特性の制御により、紫外LEDと低融点ガラスを組み合わせた白色LEDの実現に資することが期待される。
透明な低融点ガラス材料は賦形性(成形加工の容易性)にも優れるため、今回の成果によって、これまでは有機材料の劣化により制限されていた白色LED開発に対し、安定性・信頼性に優れた新しい無機系低融点材料として、革新的な波及効果を及ぼすことが期待される。

なお本研究内容に関する講演に対して、第28回(2010年春季)応用物理学会講演奨励賞が授与された。詳報はApplied Physics Express 誌(応用物理学会、3巻、214204、2010年8月6日)にて公開された。

[問い合わせ先]
東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻
光物性学分野(電話 022-795-7964)
教授 藤原 巧(fujiwara◎laser.apph.tohoku.ac.jp)(◎を@に置き換えてください)
ホームページ: http://www.apph.tohoku.ac.jp/fujiwara-lab/
 

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