2010年 | 研究成果
テラヘルツ光で見たラットリング振動の異常性:グリーンエネルギーを生む熱電変換物質の開発への重要なヒント
熱電変換とは熱を電気に直接変換することです。この変換効率が高ければ、製鉄所やごみ焼却炉などで発生する廃熱を用いた発電が可能となるので、熱電変換物質の開発はエネルギーの再生利用に重要な鍵を握っています。熱電変換物質は、電気はよく流れるが熱を伝えにくいという性質をもつことが必要です。熱の伝導を抑える機構として、カゴ状物質中の原子のラットリング振動が最近注目されています。ラットリングとは赤ちゃん用玩具の「ガラガラ」という音に倣って名付けられたものです。
今回、東北大学・大学院理学研究科物理学専攻の豊田直樹教授のグループ(低次元量子物理研究室)は、クラスレ-ト化合物Ba8Ga16Sn30のカゴに内包されているバリウム(Ba)原子のラットリング運動をテラヘルツ光で撮影することに成功しました。この成果は、ガラス状物質にみられる低い熱伝導と金属のような高い電気伝導がこの物質で共存するため熱電変換効率が高いことを発見した、広島大学・大学院先端物質科学研究科の高畠敏郎教授のグループ(磁性物理学研究室)との共同研究で得られました。
論文は、年明けの1月7日発行のフィジカル・レビュー・レター誌(米国物理学会)にて発表されます。
(問い合わせ先)
東北大学・大学院理学研究科・物理学専攻
教授:豊田直樹
電話番号:022-795-6467(6604)
E-mail:toyota-n*ldp.phys.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えて下さい)