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平成23年 東北大学総長 年頭所感

 東北大学の皆さん。明けましておめでとうございます。新年の門出にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

 皆さん、ご存知のとおり、厳しい経済社会情勢に直面するなかで、国立大学法人も今までの価値観によらない新たな機能分化(機能強化)のステージに向けて動きだしています。そして今年は、国立大学法人全体が主体的な改革を国民に見える形で実行することが求められる年になると思います。私たちは揺るぎない将来ビジョンをもって大学の改革に立ち向かうだけでなく、知の本源として人類社会に貢献するという、大学の原点に戻ることが最も重要な課題になると考えます。

 これまで東北大学は100年余という歴史において常に時代のフロントを切り拓いてきました。その原動力は、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念をもとに、たゆまぬ研究・教育の創造により、社会から信頼、尊敬、そして愛情という財産を積み上げてきたところにあります。地球規模の課題が山積している現代社会においても、総合大学という立場から社会に貢献する研究・教育を創造していくことが私たちに託された使命なのです。その決意は、昨年4月から始まった第2期中期目標・中期計画や井上プラン(東北大学アクションプラン)にも込められています。

 新たな年を迎え、私の総長としての任期も残すところ1年3月となりました。本年はその任期中における仕上げとして、世界リーディング・ユニバーシティに向かって必要な改革を着実に進めていきます。
まず、優先的に実行すべき戦略プランを具体的な行動計画にまで落とし込み、迅速に実行に移していきます。特に東北大学をさらに魅力溢れる大学とするには、研究・教育をリードするための種をまき、育てることが重要となります。限られた経営資源のなかでは選択と集中が必要となりますが、研究・教育の創造におけるリスク要因を解消できるよう大学全体で熟議し、具体的に実施できるものは直ちにアクションを起こしたいと考えています。また、共生社会の求めるパートナーとして、グローバル戦略を一段と進めていきます。産学連携をはじめとする社会に効果的なソリューションの提供システムの改善も進めていきます。

 さて、井上プランに取り組んだ4年間を経て、東北大学のプレゼンスは着実に向上し、様々な取組みが実を結びつつあります。このような成果は、皆さんの一意専心の賜物であることを強く感じております。と同時に、ここで皆さんには2011年を迎えるにあたり、これまで以上にチャレンジ精神をもって過去に縛られない発想と行動をしていただきたいと思います。
現代社会はその変化が速くかつ不連続であり、これまでの常識を覆すような事態が次々と起きる予測困難な時代です。過去の経験則だけで物事を考え、「木を見て森を見ず」(One cannot see the wood for the trees)で行動していては、現状維持も危ういと考えるべきです。いかなる環境変化にも負けず立ち向かっていける者だけが、未来を先導する資格があるのです。私たちがいかにチャレンジ精神をもって賢明に対応し得るかが、東北大学の持続的な成長発展の決め手となると言っても過言ではありません。
「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」この文章は、魯迅の『故郷』という作品の結びで「希望」について述べたものです。今まさに東北大学の真価が問われるときだと思っています。そして、皆さんがその改革の主役です。皆さんとの円滑なコミュニケーションと強固なチームワークがあってこそ、新しい道を切り拓くことができます。大学をめぐる環境変化が激しければ激しいほど、皆さんの英知と行動によって東北大学はさらに強くなり、世界リーディング・ユニバーシティとしてしっかり歩んでいけるものと確信しています。

 最後になりましたが、健康には十分留意され、本年が有意義な1年になるよう、元気に明るくスタートしましょう。本年もよろしくお願いします。

平成23年1月4日 東北大学総長 井上 明久

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