2011年 | プレスリリース
分子をくるりと回して磁石のオン・オフ制御 -単分子磁石を用いた単分子メモリー開発へ道-
JST 課題解決型基礎研究の一環として、東北大学多元物質科学研究所の米田 忠弘 教授と同校 大学院理学研究科の山下 正廣 教授らは、1つの分子で 磁石の性質を示す単分子磁石を用いて、単分子の単位で磁石をオン・オフするこ とに成功しました。
単一スピンは磁性材料の基本構成単位であり、最小の磁石と考えられます。情報処理に欠かせない磁気記憶媒体などが技術の進歩に伴って小型化していくなか、単一スピンを用いた究極の高密度記録に注目が集まっています。最近では分子を材料として用いる研究が盛んに行われており、分子エレクトロニクスと組み合わせて磁性制御による電流制御を行う分子スピンエレクトロニクス、あるいは単分子メモリーが提唱されています。1つの分子だけで磁石の性質を示す単分子磁石は、このようなスピン素子の材料として最適な分子の1つですが単一分子で磁性を制御した例は、まだありません。
本研究では単分子磁石であるテルビウム・フタロシアニン錯体分子を用いて、単分子の磁石をオン・オフさせることが可能であることを示しました。この分子は平面型のフタロシアニン配位子(Pc)2枚が互いに向き合うように重なって、1つのテルビウム(Tb)金属原子を挟む構造(TbPc2)をしています。今回、これに電流を流して向かい合う配位子をくるりと回転させるという手法を開発し、2枚の配位子の相対角度を制御することで分子磁石をオン・オフさせることに成功しました。
この成果は、電流による分子の構造変化を利用した単一分子のスピン操作手法を示したもので、今後、単一分子メモリーへの応用が期待されます。単分子磁石は、1分子が1個のメモリーとして働くとすると、1モルで6×1023ビットのメモリー(片面1層DVDディスクの15兆倍)となり、究極の高密度記録につながるものと期待されます。
本研究成果は、2011年3月1日(英国時間)に英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」で公開されます。
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米田 忠弘(コメダ タダヒロ)
東北大学多元物質科学研究所 教授
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