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重い電子超伝導の理論計算に成功 ―奇妙な性質を持った超伝導―

本研究科物理学専攻 大槻純也助教は、これまで理論的な扱いが難しかった希土類化合物における超伝導を扱う数値計算手法を開発し、大規模数値計算によって、これまでに確認されていない奇妙な超伝導状態が希土類化合物において実現する可能性があることを明らかにしました。この成果は2015年7月15日にPhysical Review Letters誌に掲載されました(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.036404)。

研究内容

電子の質量は不変な定数ですが、化合物中ではその質量が変化しているように見えます。特に希土類化合物では、電子の見かけ上の質量が実際の質量の10倍から1000倍にもなる場合があり、「重い電子」と呼ばれています。重い電子は通常の電子には見られないような変わった性質を示すことから、実験・理論の両面から活発な研究がされています。重い電子が引き起こす現象の一つに超伝導があり、質量の非常に大きな重い電子が電気抵抗ゼロで物質中を流れるという一見相反する性質を併せ持った現象が起こります。この重い電子超伝導がどのようなメカニズムで実現しているのか、またその性質は通常の超伝導のそれとどのように異なるのかということに注目が集まっています。

重い電子超伝導の理論的な扱いとしては、重い電子と超伝導の2つの「種」を取り入れる必要があります。従来の計算手法ではそれらを別々に扱っており、両方を考慮に入れた計算はその取扱いの難しさからなされていませんでした。大槻純也助教は、まず重い電子状態を記述する独自の数値計算アルゴリズムを開発、さらにそれを発展させて超伝導を記述する理論枠組みを構築しました。この独自の計算手法を用いた大規模数値計算により、重い電子が実際に超伝導になることを理論的に明らかにしました。また、その超伝導の対称性が従来の予想とは異なる新奇なものである可能性を初めて指摘しました。

今後の展開

この成果により、これまで理論的に扱うことの難しかった重い電子超伝導の詳細な理論研究が可能となります。また、この研究で得られた結果は、これまで見つかっていない新たな性質を持つ超伝導が重い電子系において実現している可能性を示唆し、さらなる研究を促すものと期待されます。

参考図

重い電子超伝導の概念図。(a)通常の電子は物質中で散乱されるため電気抵抗が生じる。(b)超伝導状態では電気抵抗が消失する。(c)希土類化合物中では、電子間のクーロン相互作用により、見かけ上の質量が非常に大きな「重い電子」になる。(d)重い電子が超伝導になる場合があり、その起源や性質に関しては未解明の問題が多く残っている。

問い合わせ先

東北大学大学院理学研究科
物理学専攻 物性理論研究室
助教 大槻 純也
電子メール otsuki*cmpt.phys.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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