2016年 | プレスリリース・研究成果
細胞内のカルシウム濃度を一定に保つメカニズムを解明 ~ジスルフィド還元酵素が、貯蔵庫へのカルシウムの出入りを制御~
細胞内のカルシウムイオンはさまざまな生命現象のセカンドメッセンジャーとして機能するもっとも重要な物質の1つです。細胞内小器官の1つである小胞体は、細胞内のカルシウム貯蔵庫として働き、小胞体膜上のカルシウムチャネルやポンプがその濃度の制御に関わっています。小胞体カルシウムポンプSERCA2はサイトゾルから小胞体内腔へのカルシウムイオンの取り込みを担い、小胞体内腔およびサイトゾルのカルシウム濃度の維持に必須とされています。これまでに、SERCA2b分子の小胞体内腔部位にはレドックス(酸化還元)制御を受ける2つのシステイン(アミノ酸)が存在し、これらシステインが酸化されジスルフィド結合を形成することでカルシウムの取り込み活性が抑えられることが知られていました。しかし、酸化されたシステインを還元し、SERCA2bを活性化させるメカニズムはこれまでわかっていませんでした。
今回、京都産業大学の永田和宏教授、潮田亮助教、理化学研究所の御子柴克彦チームリーダー、宮本章歳研究員、東北大学の稲葉謙次教授らのグループは、ジスルフィド還元酵素ERdj5が、SERCA2bのジスルフィド結合を還元することによって、SERCA2bのカルシウムの取り込みを活性化することを見いだしました。また、ERdj5は、小胞体内のカルシウムイオン濃度が低いときは、SERCA2bを活性化し、濃度が十分高くなると、SERCA2bから解離してSERCA2bを不活性化しました。ERdj5を介した、この巧妙なフィードバック制御機構によって、小胞体内のカルシウム濃度が一定に維持されていることを初めて明らかにしました。
本研究の成果は2016年9月30日午後(米国東部時間)に米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences, USA)のオンライン速報版で公開されました。
小胞体を中心とした細胞内カルシウム動態の概略
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〈研究に関すること〉
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教授 稲葉 謙次(イナバ ケンジ)
Tel:022-217-5604
E-mail:kinaba*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
〈報道に関すること〉
東北大学 多元物質科学研究所
総務課総務係
Tel: 022-217-5204
E-mail: soumu*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)