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海底地殻変動データを用いて東北地方太平洋沖地震に引き続くゆっくりすべりを高分解能で検出―巨大地震の発生過程の理解に重要な知見―

国立研究開発法人海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センターの飯沼卓史研究員は、東北大学大学院理学研究科の日野亮太教授、内田直希准教授及び東北大学災害科学国際研究所の木戸元之教授らとともに、東日本大震災をもたらした2011年東北地方太平洋沖地震(以下、「東北沖地震」という)の震源域周辺で得られた海陸の地殻変動データを解析した結果、東北地方の沖合のプレート境界断層において、東北沖地震の際にすべりを起こした領域の周辺でのみ余効すべりが発生しており、地震波を放出するような速いすべりを起こす領域と、余効すべりのように人間には感じられないゆっくりとしたすべりを起こす領域とが、プレート境界面上で重なっていないことを見出しました。

また、東北地方太平洋沖地震では破壊が及ばなかった三陸沖北部では、1968年の十勝沖地震のようなマグニチュード8弱の地震が100年弱の間隔で繰り返し発生していますが、この領域には余効すべりが及んでおらず、依然として強く固着していて次の地震への準備が着実に進んでいることを、地震活動データの解析と比較することで確認しました。さらには、その周囲のすべりが東北沖地震以前よりも速くなっていることから、次の三陸沖北部の地震は平均よりも短い発生間隔で起こることが予想されます。

こうした結果は、マグニチュード9の巨大地震の発生メカニズムも、断層面の摩擦状態によって規定されるすべり様式に支配されていることを示すもので、プレート境界型地震の発生過程の包括的な理解のために重要な知見を与えるものであると同時に、地震サイクルシミュレーションにおいて再現すべき現象の一つを提示することで長期的な地震発生予測にも貢献すると期待されます。

本研究は、JSPS科研費JP20244070、JP15K05260、JP26000002、JP26109007の助成を受けて実施されたものです。この研究成果は、英科学誌「Nature Communications」電子版に2016年11月17日付(日本時間)で掲載されました。

海陸の地殻変動データから推定された、プレート境界断層における余効すべりの分布。赤青の色ですべり量を示す(図中下部のカラースケール参照)。正値は逆断層型のすべり(地震時のすべりと同じ向き)を、負値は正断層型のすべり(沈み込むプレートに引きずり込まれる向き)を表す。すべり量0.4mごとに等値線を描いてある。青色の破線は東北沖地震の地震時すべりの等値線(10m間隔)を、黒の破線はプレート境界型地震の西縁を表す。赤の破線はプレート境界面の等深線。緑の点線で囲った範囲は余効すべりの推定精度が十分良いと考えられる領域に対応する。灰色の等値線は過去の大地震の破壊域。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科
地震・噴火予知研究観測センター
教授 日野 亮太
TEL:022-225-1950
E-mail:hino*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院理学研究科
地震・噴火予知研究観測センター
准教授 内田 直希
TEL:022-795-3917
E-mail:naoki.uchida.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学災害科学国際研究所
災害理学研究部門
教授 木戸 元之
TEL:022-752-2063
E-mail:kido*irides.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
特任助教 高橋 亮
電話:022-795-5572

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