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リチウムイオン二次電池の少量多品種量産技術の確立と電気自動車への搭載試験の開始について

東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe) 長谷川史彦教授のグループは、リチウムイオン二次電池の少量多品種量産技術の開発に成功し、電気自動車への搭載試験を開始しました。

電気自動車の重要性は、沿岸の被災地だけでなく、全国の中山間地域で一層高まると考えています。過疎高齢化が進展する中で地域公共交通の再建が遅れており、安全で使い勝手の良い地域交通システムとして、小型の電気自動車普及への期待が高まっています。

また、被災地では特にガソリンスタンド再建が遅れており、地下のガソリンタンクの老朽更新ができずに廃止になる事例も増えております。再生可能エネルギーによる地域発の電力を有効活用する視点においても電気自動車への期待が高まります。

開発の背景と経緯

 東北大学未来科学技術共同研究センター次世代移動体システム研究会は、震災復興に係る東北の新しい街作りと本来抱えていた高齢化社会へ対応する新たなライフスタイルの提案として、電気自動車を中心においた自動走行等の新しい交通システム作りに取り組んでいます。その活動の中で蓄電池の重要性を認識しており自ら開発に乗り出しました。重要となるのは熱安定性に優れ、扱いやすくかつ蓄電能力の高い電池を長期安定して地域に供給できる体制を作ることです。

開発した中核技術

(1)熱的安定性に優れる大容量の電池セル
 リチウムイオン二次電池の使用上の問題点を解決するために、熱的安定性に優れるマンガン系正極を採用しており安全性に優れています。1セル当たり95Whの大容量電池を開発しました。

(2)ドライルームレス製造ライン(設備コストを1/10、操業費を大幅に削減)
 水分の微量な混入を嫌うリチウムイオン二次電池製造ラインは通常ドライルームの中に設置されます。ドライルームは初期投資のみならず、ランニングコストも高額となり地域の中小企業が電池製造業に参入するための大きな障壁となっていました。
 今回、未来科学技術共同研究センターがドライルームを使わない低コスト製造ラインを実現したことで、中小企業による地産地消型のリチウムイオン二次電池の量産体制構築が可能になりました。

(3)少量多品種の生産に対応
 一般にリチウムイオン二次電池製造ラインは大規模で少量多品種の製造に向きません。未来科学技術共同研究センターでは、生産ロット数の変更を容易とする柔軟な製造ラインを構築しました。これにより地域特性に合わせたカスタマイズ開発(低温作動型、高温作動型、容量や大きさの変更等)が可能な少量多品種のリチウムイオン二次電池の生産体制の構築を可能にしました。

期待される適用範囲

リチウムイオン二次電池製造の地域プラットホーム構築により、地域特性を考慮した大容量リチウムイオン二次電池の地域への供給が可能となります。地域ではソーラーや風力発電により自ら生み出した再生可能エネルギーを蓄電することが出来るようになり、電気の多様な利用方法を検討し、新たな産業を創出する原動力が生まれます。

今回、東北大学未来科学技術共同研究センターで開発したリチウムイオン二次電池の実用化可能性と被災地貢献への展開に注目いただいた、宮城ダイハツ販売株式会社殿から最新型スポーツカー"コペン"の寄贈を受け、自製のリチウムイオン二次電池を搭載した電気自動車への改造を行いました。

今後のリチウムイオン二次電池のカスタマイズ開発と併せて、沿岸被災地及び過疎高齢化の進む中山間地に適した車両の走行試験などを行っていきます。

東北大NICHe電池の特徴

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学 未来科学技術共同研究センター
多賀城拠点
伊藤 修(いとう おさむ)
荒井 恵美子(あらい えみこ)
鎌田 浩一郎(かまた こういちろう)
電話・FAX:022-352-6601
E-mail:osamu.ito.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

   

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