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マントルの底でダイヤができる? ―地球マントル最深部でのダイヤモンド生成反応を解明―

本学理学研究科地学専攻博士課程後期1年の前田郁也、大谷栄治名誉教授、鎌田誠司助教、坂巻竜也助教と、公益財団法人高輝度光科学研究センターの平尾直久研究員、大石泰生研究員による合同研究グループは、地球マントルの最深部におけるダイヤモンド生成反応を実験的に突き止めました。本研究結果より、ダイヤモンドの故郷が地下約2900 kmのマントル底部に存在する可能性が提案されました。今後、天然ダイヤモンドの分析的研究と照らし合わせることで、未知のフロンティアである地球深部について、新たな情報を得られることが期待されます。

本研究成果は英国nature publishing groupのオープンアクセス科学雑誌「Scientific Reports」にて2017年1月13日に公開されました。

詳細な説明

東北大学大学院理学研究科の博士課程後期学生の前田郁也らの研究グループは、炭酸塩鉱物とケイ酸鉱物の反応を地球マントル全域の温度圧力条件下で観測することにより、地球マントルの底の条件でダイヤモンドが生成することを突き止めました(図1)。高温高圧環境を再現した実験は、大型放射光施設SPring-8を利用して行われました。

地球上で見つかっているほとんどの天然ダイヤモンドは、地下約200kmまでの深さで生成すると言われています。これに対し、深さ400kmを超える「超」深部でも、ダイヤモンドがごくまれに産出することがわかってきました。

ダイヤモンドの中には、しばしば、生成した場所にある物質(岩石など)が包有物として含まれています。超深部から得られたダイヤモンドの中にも、鉱物の包有物が見つかっています。これらの包有物やダイヤモンドは地球「超」深部の貴重な試料です。このため、両者を詳しく調べることで、未知の地球内部について、より多くの情報を得られることが期待されています。

以上のダイヤモンドが生成した深度や環境について理解を深めるためには、天然試料の観測のみならず、ダイヤモンドの元となる物質や、それらの変化する条件も制約する必要があります。しかしながら、深さ400kmから2900kmにおよぶ地球マントル深部条件においては、実験の困難さも相まって、ダイヤモンドの生成過程はよく知られていませんでした。

今回の研究結果により、沈み込んでいく海洋プレートの中の鉱物がマントルの底に達したときに反応を起こすことで、ダイヤモンドが生成されるというモデルが提案されました(図2)。マントルの底に至るような地下超深部条件で、ダイヤモンド生成反応を調べた研究は、前例のないものでした。このモデルは、超深部におけるダイヤモンドの故郷や生成過程を探るにあたって、考慮すべき材料となります。今後、本成果をヒントに天然ダイヤモンドを注意深く観察することで、未知の地球内部構造や、地下深部の炭素の循環機構が明らかになってくることが期待されます。

図1

図1 地球内部の模式図および本研究により提唱されたダイヤモンドの故郷

図2

図2 炭酸塩とケイ酸塩の反応によるダイヤモンド生成が起こりうる領域

問い合わせ先

東北大学大学院理学研究科地学専攻
博士課程後期 1年  前田 郁也(まえだ ふみや)
電話:022-795-3947
E-mail:f.maeda*dc.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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