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DNA上の「ドーナッツ分子」を維持する仕組みを解明

発表のポイント

  • 増殖する細胞で限られた時間内にゲノムDNAを複製するために、DNAに乗るドーナッツ状の分子の細胞内での修飾が重要であることを示しました。
  • ドーナッツ状分子の修飾が、DNA上のクランプ構造を安定化し、DNA合成時にDNAポリメラーゼの機能を維持する役割を持つことを示しました。
  • がん由来の細胞株ではドーナッツ状分子の修飾の量が多く、この仕組みを標的として、がん細胞の増殖を抑制できることが示唆されました。

概要

 生体の遺伝情報を記述された、ゲノムDNAは,細胞の増殖の際に正確かつ素早くコピーされる必要があり、あらゆる生物が精巧なDNA複製の仕組みを持ちます。DNA複製の際には、様々な酵素が機能する必要があり、「複製クランプ」は、多くの酵素のDNA上での足場となり、酵素の効率的な働きに必要不可欠なものです。複製クランプは、ドーナッツ状の構造をとり、DNA上を糸に通した輪の様に移動可能でありますが、複製クランプともに、DNAを合成する酵素(DNAポリメラーゼ)がスライドし、スムーズなDNA合成が起きます。

 東北大学学際科学フロンティア研究所の大学保一助教(大学院生命科学研究科兼任)らは、サセックス大学(英国)のAntony Carr教授のグループ、名古屋大学の荻朋男教授、長崎大学の中沢由華助教らと共同で、複製クランプの分子修飾の新たな役割を明らかにしました。本研究は分裂酵母を使用し、小さなタンパク質(ユビキチン)による複製クランプの修飾がDNA複製を滞りなく実施するために重要な現象であることを示し、同時に、その要因となる細胞の仕組みを明らかにしました。複製クランプのユビキチンによる修飾が、クランプ分子自体のDNA上で安定性を高め、それゆえに、複製クランプとDNAポリメラーゼとの結合も強められることを発見しました(図)。これらの仕組みはヒトを含めた動物にも保存されていると考えられ、がん細胞、幹細胞などの活発に増殖するおける細胞でのDNA複製機構を理解、制御する上で重要な知見です。本研究の成果は、平成29年5月8日(米国時間)付けで、PLOS Genetics誌に掲載されました。

図 ドーナッツ状分子「複製クランプ」の修飾のDNA機構における役割

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
学際科学フロンティア研究所
新領域創成研究部
担当 大学 保一 (だいがく やすかず)
電話:022-217-5745
E-mail:ydaigaku*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
学際科学フロンティア研究所 企画部
担当 鈴木 一行 (すずき かずゆき)
電話:022-795-4353
E-mail:suzukik*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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