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"自己集積"で量子ドットの発光を自在に制御 ~太陽電池とLEDの効率向上と高輝度化に期待~

発表のポイント

  • 蛍光特性を示すCdS量子ドットと液晶性を示すデンドロンとから"有機無機ハイブリッドデンドリマー"を開発した。
  • "有機無機ハイブリッド化"により量子ドットが液晶となり自己集積的長周期構造を形成することを見出した。
  • CdS量子ドットが示す長周期構造はこれまでになく非対称性の高いものであった。
  • 自己集積したCdS量子ドットのナノ組織構造制御により蛍光発光強度を自在かつ可逆的に制御できることをはじめて見出した。
  • 観察された光エネルギー移動を活用することで、太陽電池の効率アップやLEDの高輝度化につながることが期待される。

概要

 東北大学 多元物質科学研究所 蟹江澄志 准教授、松原正樹 博士 (現 仙台高等専門学校 助教)、村松淳司 教授(同研究所所長)、シェフィールド大学 Goran Ungar教授らの研究グループは、東北大学 多元物質科学研究所 秩父重英 教授グループおよび九州大学 先導物質化学研究所 玉田 薫 教授グループと連携して、硫化カドミウム(CdS)量子ドット表面に液晶性を示すデンドロンを密に修飾することで、CdS量子ドットにデンドロン由来の液晶性を付与しました。得られたデンドロン修飾量子ドットはこれまでで最も非対称性の高い液晶性立方晶構造を形成し、長周期的に規則配列することを見出しました。さらに、CdS量子ドットが自己集積すると、外部の光エネルギーによりCdS量子ドット内部に生じた励起エネルギーが周囲のデンドロンにほぼ全てエネルギー遷移することで量子ドットの発光強度を自在に制御できることを明らかにし、その機構を解明しました。このような量子ドットの発光を制御するエネルギー遷移機構は光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換できる可能性があり、高効率太陽電池や高輝度発光ダイオード(LED)の開発につながる事が期待できます。さらに外部の温度変化により発光強度が変化することから生鮮食品の熱履歴センサーなどの開発にもつながると期待できます。

 本研究成果は、「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」および「物質・デバイス領域共同研究拠点」事業により得られました。6月8日(木)付で、Cell Press社から2016年あらたに刊行されたアメリカの国際化学誌「Chem」に掲載されました (DOI: 10.1016/j.chempr.2017.05.001)。

図. 球状に自己集合する液晶性デンドロンをCdS量子ドット表面に密に修飾することで得られる"有機無機ハイブリッドデンドリマー"概略図
①:複数の分子が自発的に球状に集合した液晶性デンドロン、②:表面にカルボキシル基(CO2H)を有するCdS量子ドット、③:CdS量子ドットをコアとする"有機無機ハイブリッドデンドリマー"、④:自己集積によるCdS量子ドットの発光・消光制御

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 蟹江 澄志(かにえ きよし)
電話:022-217-5165
E-mail:kanie*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 
広報情報室
電話:022-217-5866
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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