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植物が宇宙で成長するための機能を解明 微小重力下では、根が高水分側に伸びることを発見

発表のポイント

  • 植物の根は、生存に必須な水を取り込むために、地上(重力環境下)では重力に応答し下側に伸びるだけでなく、水分勾配にも応答して水分の多い方向に伸びる。
  • 微小重力下では、水分勾配により敏感に応答して高水分側に根が伸びることを、宇宙実験によって明らかにした。
  • 宇宙居住のための閉鎖生態系で植物を効率的に栽培するための、節水型養水分供給法の開発に貢献することが期待される。

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の高橋秀幸教授らのグループは、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 等と共同で、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で宇宙実験を実施し、キュウリの根が微小重力下(µG)では水分の多い方向に伸びることを明らかにしました。「きぼう」実験室内で人工的につくりだした地球と同じ重力環境(1G)におかれた根は、水分の多い・少ない方向と関係なく、重力方向(下側)に伸びました。また、キュウリの根は、水分勾配および重力を感知して、植物ホルモンのオーキシンの分布を変化させますが、これにはオーキシンを運ぶタンパク質CsPIN5の局在変化がともない、地上では、重力に応答したCsPIN5の局在変化が水分勾配によって誘導されるオーキシンの再分布を抑制することが示されました。これらの結果から、根は重力・水分勾配を感知して伸長方向を制御する能力を持ち、地球上ではそれぞれが競合的に働きますが、宇宙の微小重力下では重力応答が起こらないために水分勾配への応答が顕著に現れることがわかりました。

 以上の研究成果は、宇宙環境を利用して根の重力と水分勾配への応答を分離できることを意味し、宇宙の微小重力下や地球上の半乾燥地・植物工場などの特殊環境下で、水分の多い方向に伸びる性質を利用して根の伸長方向を制御し、水を効率的に植物に供給するための新技術の開発研究につながると期待されます。

 本研究結果は、8月3日の国際誌「New Phytologist」(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金およびJAXAの支援を受けて行われました。

図. 宇宙の微小重力(µG)下で高水分側に伸びる根と人工重力(1G)下で重力方向(白矢印)に伸びる根(a)、およびそれらの根の屈曲角度の経時的な変化(b)。キュウリの種子をスポンジ様ブロック(各写真の左)に差し込み、「きぼう」実験室内でスポンジ様ブロックに給水して種子を人工重力(1G)下で発芽させた。給水18時間後に容器内の芽生えと対面側に貼り付けたろ紙(各写真の右)に水(H20)または食塩水(NaCl)を注入して、それぞれの容器を人工重力(1G)下または微小重力(µG)下におき、芽生えを生育させた。微小重力下(µG)では、根が水を含んだスポンジ側に屈曲して伸び、水分勾配の大きい場合(NaCl区)、水分勾配の小さい場合(H20区)に較べて、より大きな屈曲を示した。人工重力(1G)を負荷すると、根は水分勾配に関係なく、重力の方向(白い矢印)にまっすぐに伸びた。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 高橋 秀幸(たかはし ひでゆき)
電話番号:022-217-5714
Eメール:hideyuki*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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