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肥満に影響する遺伝マーカーを解明 ‐日本人17万人の解析により肥満に関わる病気や細胞を同定‐

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイトらの共同研究グループは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長ら、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構の清水厚志部門長代理ら、国立がん研究センター社会と健康研究センターらと共同で日本人約16万人の遺伝情報を用いた大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)と日本人約1.5万人による再現性の検証、ならびに欧米人約32万人との民族横断的解析を行い、体重調節に関わるヒトゲノム上の193の遺伝的変異(感受性領域)を同定しました。

肥満はさまざまな病気の発症リスク因子であり、その原因は食べすぎや運動不足だけではなく、遺伝的な影響も大きいことが知られています。しかし、遺伝要因が体重の個人差をもたらす生物学的なメカニズムについては、十分に解明されていません。

今回、共同研究グループはバイオバンク・ジャパンに参加した日本人約16万人の遺伝情報を用いてGWASを実施し、さらに欧米人約32万人で行われたGWASとのメタ解析を行うことにより、体重に影響すると考えられる193のゲノム上の感受性領域を同定しました。このうち、112領域は初めて同定されたものです。また、組織特異的なエピゲノム情報とGWASの統合解析により、過去に報告されていた脳の細胞に加えて、免疫細胞のリンパ球が体重調節において主要な役割を果たすことを示す複数の遺伝学的な証拠を見いだしました。さらに、GWASの結果を用いて、33の病気と体重の遺伝的な関わりを評価したところ、2型糖尿病や心血管病などの生活習慣病だけでなく、精神疾患、免疫・アレルギー疾患、骨関節疾患における遺伝要因と体重の個人差に関わる遺伝的因子との間に共通性があることを見いだしました。

本研究は、体重の個人差に影響する遺伝要因について、遺伝学的な知見だけでなく、体重と病気との関わりや、生物学的に関連する組織や細胞型など広範な視点から新しい知見を提供するものです。今後、体重に関わる幅広い科学分野での研究の発展に寄与するものと期待できます。

なお、本研究で利用したバイオバンク・ジャパンのサンプルの遺伝情報は、科学技術振興機構(JST)バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通じて公開されます。これらのデータを世界中の研究者が利用可能になることで、さらなる研究成果につながると考えられます。

本研究成果は、国際科学雑誌『Nature genetics』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(9月11日付け:日本時間9月12日)に掲載されました。

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問い合わせ先

東北大学東北メディカル・メガバンク機構 広報戦略室
室長 長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908 
Eメール:f-nagami*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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