2017年 | プレスリリース・研究成果
合成した膜タンパク質に対する薬物副作用を測るバイオチップ~個別化医療を指向した薬物の選別が加速~
発表のポイント
- 半導体微細加工技術の活用により、耐久性に優れた人工細胞膜を開発し、ヒトの膜タンパク質hERGチャネルに対する薬物副作用を記録しました。
- このhERGチャネルは、細胞を用いずに合成した無細胞合成タンパク質であり、無細胞合成hERGチャネルの薬物感受性の記録に世界で初めて成功しました。
- hERGチャネルは、その遺伝子型と薬物副作用との関連性が示唆されており、今後は個別化医療を指向して薬物を選別していく研究が加速すると期待されます。
概要
東北大学電気通信研究所(兼材料科学高等研究所)の平野愛弓教授、同大学電気通信研究所の但木大介助教、東北福祉大学感性福祉研究所の庭野道夫教授、埼玉大学理工学研究科の戸澤譲教授などからなる研究チームは、半導体微細加工技術と、細胞を使わずに膜タンパク質を合成する無細胞合成技術とを融合することにより、ヒトの心筋に存在するhERGチャネルと呼ばれる膜タンパク質の薬物感受性を記録することに成功しました。hERGチャネルは、その遺伝子型と薬物副作用との関連性が示唆される膜タンパク質であり、今後は、個別化医療を指向して薬物を選別していく研究が加速すると期待されます。
本成果は、2017年12月18日に、「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」のオンライン版に掲載されました。なお、本研究は、JST-CRESTおよび科研費基盤研究(B)の助成を受けて行われたものです。
論文情報
雑誌名:Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)
論文タイトル:Mechanically stable solvent-free lipid bilayers in nano- and micro-tapered apertures for reconstitution of cell-free synthesized hERG channels(無細胞合成hERGチャネルの再構成のための、ナノおよびマイクロテーパー付孔中で形成した安定脂質二分子膜)
著者:Daisuke Tadaki, Daichi Yamaura, Shun Araki, Miyu Yoshida, Kohei Arata, Takeshi Ohori, Ken-ichi Ishibashi, Miki Kato, Teng Ma, Ryusuke Miyata, Yuzuru Tozawa, Hideaki Yamamoto, Michio Niwano, and Ayumi Hirano-Iwata(但木大介、山浦大地、荒木駿、吉田美優、荒田航平、大堀健、石橋健一、加藤美生、馬騰、宮田隆典、戸澤譲、山本英明、庭野道夫、平野愛弓)
DOI番号:10.1038/s41598-017-17905-x
参考図:半導体チップに形成された脂質二分子膜に無細胞合成チャネルが埋め込まれた様子
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学 電気通信研究所/材料科学高等研究所
教授 平野 愛弓 (ひらの あゆみ)
電話:022-217-5501 または 022-217-6344
E-mail:ayumi.hirano.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学 電気通信研究所
助教 但木 大介 (ただき だいすけ)
電話:022-217-5502
E-mail:daisuke.tadaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学 電気通信研究所総務係
電話:022-217-5420
E-mail:somu*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)