有朋寮の入寮募集停止・使用停止について
および
新寮建設4条件に対する大学の考え方について

 

はじめに

 先に発行した「学生協だより」No.1516でお知らせしましたように、老朽寮問題の深刻化と、現在そこで生活している寮生の生命・身体の危険性は、東北大学にとってもはや避けて通れない課題となっていました。これに対応するため大学はこのたび、やむを得ず、有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮を使用停止とすることとしました。また老朽寮に代わる新寮の建設は、将来入学する入寮希望者のためにも、一日でも早く実現しなければなりません。「学生協だより」No.16では、新寮建設の予算化のために必要とされる「新寮建設4条件」について、および東北大学学生寮自治会連合(寮連)等が大学との合意形成のための「必須条件」と称して行ってきたいわゆる「大衆団交」の実態についてお知らせしました。この号では、今回の有朋寮の入寮募集停止および使用停止についてお知らせすると同時に、現在の大学が「新寮建設4条件」について、どのように考えているのかをお知らせし、これらの問題につき、全学の教職員・学生の皆さんにより理解を深めていただきたいと思います。

 


有朋寮の入寮募集を停止し平成15年3月には使用停止とします

 大学は、本年9月19日以降有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮の使用を停止することを決定し、本日付けで告示しました。
 有朋寮については、学生協だよりNo.1516でお知らせしたように、以前より老朽化に伴う危険性が指摘されていました。本年度においても学生生活協議会では、老朽化が著しい有朋寮に地震による倒壊や火災による焼失の危険性が高いことから、数ヶ月間の慎重な審議を行い、さらに全学の教授会からも意見を聴き、検討を重ねました。その結果、9月10日に開催された学生生活協議会において、なによりも有朋寮生の身体・生命の安全を最優先にすべきであり、有朋寮の現状での危険性をこれ以上放置することはできないとの判断から、できるだけ早く有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮の使用を停止すべきとの結論に達しました。9月18日には、その旨を大学の評議会に諮り、了承を得、全学に告示(資料1)すると同時に寮生等関係者に通知(資料2)しました。
 有朋寮には老朽化に伴う危険性があることや、新しい寮を早急に建てる必要があるということに関しては、大学と寮生との認識は一致していますが、新寮建設のための条件については、前号で説明したとおり両者の間で合意が全く得られないまま、現在に至っております。しかしながら、合意が得られないからといって、寮生の安全を守る管理責任と義務がある大学としては、これ以上現状を放置することはできないことから、今回の措置を行うことになったものです。

 

《有朋寮取り壊しまでのおおよそのスケジュール》

平成13年9月19日
平成13年9月20日以降
平成15年3月31日
平成15年4月以降

有朋寮の入寮募集停止
他寮もしくは民間アパートへの転居斡旋 (平成15年3月31日まで)
有朋寮使用停止
有朋寮取り壊し

 

 大学は、今後、退去を希望する有朋寮生に対し他寮や民間アパートへの斡旋等により、できるだけ迅速に対応したいと考えています。
 なお、現在入居している有朋寮生は平成15年3月31日までの在寮は可能ですが、寮生諸君には、建物が老朽化していることから、その期日を待たずに、速やかに退寮されることを望みます。

 


現在大学は新寮建設4条件を次のように考えています

 国立大学に学寮を建設するに当たっては文部科学省に予算を申請し、それが認められなければなりません。前号(学生協だよりNo.16)で説明したような経緯で、文部科学省(当時は文部省)は昭和55年「国立大学における厚生補導施設の改善充実について」という報告書を受けて新寮建設等のための基準を明確にしました。それがいわゆる「新寮建設4条件」です。その内容は管理運営規程の制定、負担区分の明確化(私生活費の自己負担)、居室の個室化、食堂の不設置、の4つで、これ以降に建設された全ての国立大学の学生寮にこの4条件が適用されています。それぞれの条件が意味するもの、そしてこの4条件が寮「自治」を「破壊する」ものとして寮連等が反対してきた経緯は前号で既にお知らせしたとおりですが、この4条件を満たさなければ新寮の建設のための費用が認められることは不可能です。
 このような条件の下で、東北大学に学生寮が建設されるのは今回が初めてのことではありません。現在ある7つの寮のうち、明善寮、如春寮は昭和57年、松風寮は昭和58年に建設されたもので、ほとんどの居室が個室であるとともに食堂も設置されていません。さらにこの3寮では「東北大学学寮管理運営規程」に則った運営が正常に行われています。次に詳細に述べるように、大学は今後も東北大学に建設する新しい学生寮に4条件を適用することが必要であると考えています。また、4条件が満たされなければ文部科学省と交渉にも入れません。

 


学寮は「厚生施設的側面を持つ教育施設です」

 大学における学寮の意義については、すでに昭和37年に学徒厚生審議会より出された答申のなかで、「学寮はその経済的側面ばかりでなく、共同生活を通して学生の人間形成を行う場としての教育的役割を十分認識しなければならない」ということが述べられています。本学も学寮を「厚生施設的側面をもつ教育施設」と位置付けています。
 また、国立大学の学寮の建設ならびに運営費用は、他の施設同様に国民からの税金でまかなわれています。従って、建築された学寮の運営形態は社会に納得されうるものでなければなりません。大学はそのために「新寮建設4条件」を新しい寮に対して適用する必要があると考えています。以下4条件について個々に、現在の大学の考えを述べます。

「管理運営規程」は必要です

 「寮連」等は一貫して「管理運営規程」の学寮への導入は、寮の「自治」の破壊だと主張してきました。しかし、国立大学の学寮が国有財産であり、行政財産でもある以上「規程」は必要です。国有財産は「常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的にこれを運用しなければならない」(財政法第9条第2項)と定められています。国立大学の学寮の管理運営権者は文部科学大臣です(国有財産法第5条)。同大臣は学寮の事務を総長に分掌させ(同第9条)、さらに総長はそれを学務担当の副総長に補助執行させることができると規定されています(文部科学省所管国有財産取扱規程第6条、学内規程)。従って、学務担当の副総長が学寮の管理運営についての権限と責任を有していることは明白です。大学はこの責任を果たすためには、新しく建設される寮が「管理運営規程」のもとに運営されることが必須と考えています。
 まして長引く不況が終息する展望さえも見えない今日、4条件のまとめられた当時と比べ、国民の税金の貴重さは増しこそすれ減じているとは考えられません。貴重きわまりない国民の税金を使って建設される新寮が、どのように運営されているかを大学は、社会に対して、随時説明する責任があります。「管理運営規程」はその説明の際の、根拠となるべきものです。もし「寮連」が主張する「自治」を受け入れて、「規程」を設けず、あるいは設けても「寮連」等の主張に従いこれを死文化して、一切をその「自主的」運営に任せるという立場をとれば、大学が自らこの重大な責任を放棄したことになります。「管理運営規程」とその適正な運用はこの点からも不可欠です。また先にも述べましたが、本学の幾つかの学寮においては「東北大学学寮管理運営規程」を定めた上で、寮生による実質的な自主的運営が正常に行われています。

全額国庫負担は社会の常識に反します

 「寮連」等は過去において学寮は「厚生施設」である故に、すべての経費は「全額国庫負担」であるべきだと主張してきました。しかし、学寮の維持と運営には貴重な国民の税金が用いられている以上、国民に対する説明責任と現下の社会常識から大学は、寮全体の維持運営に必要な経費と寮生の私生活に係わる経費は明確に分けられなければならないと考えています。本学においては平成12年2月の「電気料是正問題」の解決によって「私生活に係る経費」については、実質的にほぼ問題は解決しています。すなわち、現在は明確な負担区分を以て本学の全ての学寮は運営されていると言って良い状態になっており、今後もこれを維持しなければなりません。現在の社会情勢を考えても、平成8年12月に寮連が提出した「有朋寮・昭和舎建て替えに関する第二次計画案」(「二次案」、学生協だよりN.16を参照)にあるような全額国費負担などということは、大学ばかりでなく納税者である国民にも到底受け入れられるものではありません。

個室は多くの学生が希望しています

 「寮連」等は、新寮についても居室が、2人室でなければならないと主張してきました。しかし、学寮においてまず満足されているべき重要な条件のひとつが、寮生が勉学に集中できるような良好な空間の提供であるはずです。従って、生活のリズムや学習の時間帯の相違からくるストレスを回避できる「居室の個室化」が望ましいのは言うまでもないと考えられます。また先に述べた昭和55年作成の報告書の中でも、入寮希望者の85%がすでに個室への居住を希望しているという数字が挙げられています。現在でも、この数字は増えこそすれ決して減っていることはないと考えられます。例えば大学の「学生生活実態調査」(平成11年度)でも、入寮希望者男女75名のうち、希望理由を「集団生活ができる」からとした者は7名に過ぎないのに対し、入寮を希望しない者男女911名のうち、その理由を「集団生活が苦手」とした者は185名です。個室についての質問・回答ではありませんでしたが、少なくとも本学の学生が2人室を積極的に支持していないと推測する根拠になるでしょう。
 さらに学寮の意義である共同生活を通した人間形成の場と言うことに対して、居室の個室化が決して妨げになるとは考えられません。なぜなら本学においても個室化された学寮ができてすでに20年近くになり、これら3寮でも寮生諸君が協力しあいながら、自主的な共同生活を営んでいるからです。

新寮における食堂設置は困難です

 「寮連」等は学寮が「厚生施設」である以上、食堂が設置されていなければならないと、主張してきました。確かに寮に居住する学生にとって食堂があり、そこで給食されるという環境は、学生諸君にとって快適であることは理解できます。しかし、寮への食堂の設置のためには単に施設を整備する予算だけでなく、そこで働く人々の人件費を確保する必要があります。現在国家公務員の定員削減が進行し、しかもそれが世論の相当多数の支持を受けていると思える状況下では、これから食堂に配置される人達が定員内職員として認められる可能性はありません。また本学の学寮に関わる予算は大学全体の経費の中から捻出されており、当然その運用に当たっては寮施設を利用していない多数の一般学生が、存在することも考慮すべきです。昭和55年に出された文部省の厚生補導施設充実調査研究会の報告では、「寮内に自炊の設備を用意するとともに一般学生食堂の整備を図り、その運営に当たり寮生が利用しやすい条件を整える必要がある」としています。本学においても、すでに平成9年6月の学生部長会見で、「新規格寮の建設に際し、食堂建設は極めて難しい。食堂のかわりとして、補食(自炊)室の充実を計りたいと考えている。」と表明しています。食堂としては、一般学生も共に利用できる施設の整備充実が考えられる選択肢のひとつです。

 


おわりに

 平成7~9年にかけて、大学は新寮建設に向けて、寮連及び寮生との合意を得ることを期待して、学生部長会見(寮連等のいう「団交」)を行ってきました。とても理性的な話しあいとはいえない暴力的な実態を耐えて努力を積み重ねたにも拘わらず、ついに合意を形成することはできませんでした。さらに「電気料負担区分問題」を解決すべく平成9~12年にかけて3年の年月を費やし、ために老朽寮問題について何ら進展をみることができませんでした。しかし、昭和舎の焼失、さらに宮城県沖地震発生のリスク増大という新たな事態を見るに、もはや一刻の猶予も許されません。大学は老朽寮に居住する寮生の生命身体の安全を確保することを最優先し、有朋寮の入寮募集をただちに停止し平成15年3月31日を以ってその使用を停止するとの決断を下しました。
 理想的には新寮を建設し、その後で有朋寮の使用停止をすべきかもしれません。しかし、寮連等が大学案に対する反対を撤回しないという現状では、速やかに新寮建設を実現するためには、これ以上待つことはできません。寮生の生命身体の安全を最優先して、有朋寮使用停止の決断を下した今、大学は新寮建設を実現すべくいっそうの努力を傾けていきます。
 今回の措置について、東北大学のすべての教職員及び学生の皆さんにご理解いただくとともに、今後の新寮建設に向けてご協力下さるようお願いします。

資料1 有朋寮の入寮募集並びに使用の停止に関する「告示」

告   示
 大学は、学生生活協議会及び評議会の議を経て、本日(平成13年9月19日)以降有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮の使用を停止することを決定した。
 本決定は、木造建築の同寮が築後約50年を迎え、経年劣化が著しく、かねてから地震による倒壊や火災による焼失の危険性が指摘されていることに鑑み、なによりも入寮生の身体・生命の安全を図ることを目的として行うものである。
  平成13年9月19日
副総長(学務担当)  
学生生活協議会  

資料2 有朋寮生への通知文(写)

平成13年9月19日  
  ○ ○ ○ ○  殿
学寮専門委員会委員長   
横 川 和 男  
有朋寮の入寮募集並びに使用の停止についての通知とお願い

 大学は、9月19日以降有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮の使用を停止することを決定し、別紙(写)のとおり本日付けで告示しました。
 有朋寮については、学生協だよりNo.15、16で説明しているように、以前より老朽化に伴う危険性が指摘されていました。9月10日に開催された学生生活協議会では、老朽化が著しい有朋寮に地震による倒壊や火災による焼失の危険性が高いことから、慎重に審議した結果、なによりも有朋寮生の身体・生命の安全を最優先にすべきであり、有朋寮の現状での危険性をこれ以上放置することはできないとの判断から、速やかに有朋寮の入寮募集を停止し、平成15年3月31日をもって同寮の使用を停止すべきとの結論に達しました。9月18日には、その旨を大学の評議会に報告し、了承を得ました。 今回の措置は、地震による倒壊や火災による焼失の危険性から、有朋寮生の身体・生命の安全を図ることを考慮して行われるものです。現在入寮している有朋寮生は平成15年3月31日までの在寮は可能ですが、寮生諸君には、事情を理解のうえ、速やかに退寮されることを望みます。 大学は、今後、他寮や民間アパートへの斡旋をできるだけ迅速に対応したいと考えています。

 新寮建設の問題は、大学ならびに寮生諸君にとっても古くからの懸案でした。大学は、このような老朽寮の危険性を十分認識し、平成6年6月、補導協議会に「老朽寮問題を考えるワーキンググループ」を設け、同年12月に「新寮建設計画案」を作成し、平成7年以降今日に至るまで、毎年の概算要求に新寮建設を盛り込んでいます。
 それにも拘わらず、早期に老朽寮にかわる新寮を建てることができなかった最大の原因は、東北大学学生寮自治会連合(寮連)等が、いわゆる「新寮建設のための4条件」の受け入れを拒否し続けてきたことと、大学と合意するための必須の条件だと主張してきた、いわゆる「大衆団交」の要求です。
 有朋寮に老朽化に伴う危険性があることや、新しい寮を早急に建てる必要があるということに関しては、大学と寮連等との認識は一致していますが、新寮建設のための条件については上記の二点で合意が得られないまま現在まで至っております(学生協だより№16参照)。しかしながら、合意が得られないからといって、寮生の安全を守る管理責任と義務がある大学としては、これ以上放置を続けることはできないとの結論に達しました。従って、下記のようなスケジュールにそって有朋寮の取り壊しが進められます。

《有朋寮取り壊しまでのおおよそのスケジュール》

平成13年9月19日
平成13年9月20日以降
平成15年3月31日
平成15年4月以降

有朋寮の入寮募集停止
他寮もしくは民間アパートへの転居斡旋 (平成15年3月31日まで)
有朋寮使用停止
有朋寮取り壊し
 他寮もしくは民間アパートへの転居斡旋に関しては、大学はできる限りの努力をします。今回の措置に関し、貴君の協力をお願いします。


 『学生協だより』は、東北大学のホームページの【学内掲示板】から参照することができます。(ただし学内からのみアクセス可)
 この他に学生協からのお知らせを随時掲載する掲示板『キャンパスライフ』が、東北大学ホームページの【学内掲示板】の下に開設されています。
   http://www3.bureau.tohoku.ac.jp/gakuseikyo/
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   (「学生協だよりNo.16」に掲載のホームページ『学生の声』アドレスの一部に誤り 《(正)ac.(誤)sc.》がありましたので、お詫びして訂正いたします。)