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地磁気を利用して津波石から津波の発生時期とその規模を解明

東北大学理学研究科地学専攻の佐藤哲郎(博士課程前期2年)と中村教博准教授(地圏進化学分野・東北大学災害科学国際研究所兼務)は、熊谷祐穂(博士課程前期1年)、長濱裕幸教授(地圏進化学分野)、箕浦幸治教授(環境動態論分野)、東北大学災害科学国際研究所の後藤和久准教授との共同研究として、沖縄県石垣市の宮良湾に分布するサンゴ礁起源の津波石の残留磁気を解析することで、津波石がいつ・どのように形成されたのかを解明しました(図1)。この手法を利用することで、これまで環太平洋沿岸部に多数分布しながらも放置されている津波石に科学のメスをいれ、さまざまな地域でどの程度津波が、何回来襲したのかを、たった一つの津波石から解明でき、沿岸部のリスク評価につながる可能性があります。

地球は地磁気をもっていて、方位磁石を使うといつも北の方向がわかります。我々は地磁気を感じることができないものの、スマホやカーナビはこの地磁気とGPSの位置情報を利用して、我々に現在位置と向かっている方向を教えてくれています。また石垣島のサンゴはサンゴ礁として成長するときに、非常に細かい磁性粒子を取り込んでいたため、この地磁気の方向を残留磁気として記録しています。また石垣島には、過去の巨大な津波によってサンゴ礁が壊され、サンゴ礁起源の津波石が沿岸部に広く分布しています。これまでの放射性炭素を用いた研究によると、過去2500年の間に8回もの津波に襲われていることが明らかになっておりました。しかしながら、一旦津波石となって沿岸部に運ばれてから次の津波で津波石が動いたかどうかは、全く分かっていませんでした。今回我々は、この津波石の残留磁気を詳しく調べ、過去のどの津波によって沿岸部に運ばれ、その後の津波で津波石が動いたかどうかを世界で初めて明らかにしました。

津波石の残留磁気は、津波石となってからの経過時間とともに新しい残留磁気が地磁気と平行に着磁されるため、磁性の緩和理論を考慮することで、200トン級の津波石(図2a)は約2000年前の津波で移動し、その後の1771年の明和津波で35トン級の津波石(図2b)は沿岸部に移動していたものの、この200トン級の津波石は移動していないことが判明しました。この研究成果は、アメリカ地質学会が発行する”Geology”のオンライン版に5月22日(現地時間)にOpen Accessとして掲載されました。

発表論文
T. Sato, N. Nakamura, K. Goto, Y. Kumagai, H. Nagahama, and K. Minoura, Paleomagnetism reveals the emplacement age of tsunamigenic coral boulders on Ishigaki Island, Japan. Geology, published online May 22, 2014, doi: 10.1130/G35366.1 (2014).

 

図1 地磁気を用いて津波石の移動様式と津波の年代を求めるための概念図
地磁気は南から北に向かって水平面から約40度下向きになっていて、もともとのサンゴ礁の残留磁気もこの地磁気と平行になっていました。しかし、津波石は津波によって運ばれるため回転し、その残留磁気は上下が逆さまになることがあります。また、逆さまになった残留磁気に津波石となってからの時間が経過するにつれて、新しい残留磁気が地磁気と平行に着磁し、この新しい残留磁気の強さから津波の年代を残留磁気の緩和理論から算出できます。

 

図2 今回用いた津波石の写真 a) 200トン級の津波石 b) 35トン級の津波石

 

図3 石垣島宮良湾に分布する最大規模(200トン級)の津波石(a)が記録する地磁気の方向(b)と宮良湾沿岸部で死滅したサンゴ礁が記録する地磁気の方向(c)。d) 3次元空間の地磁気の方向を2次元平面で表現するために、水平投影と鉛直投影で地磁気成分を表し、水平投影面と鉛直投影面を重ね合わせて一枚のグラフを作り、解析します。b) や c) のグラフはそれぞれの黒丸が各加熱温度で地磁気の方向を示しています。津波前にc)であったサンゴ礁が、津波後にb)のように上下を反転させて沿岸に打ち上げられたことを示しています。これは野外にてサンゴの成長方向上下反転していることと整合していました。

 

詳細(理学研究科ウェブサイト)

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問い合わせ先

東北大学大学院理学研究科
地学専攻担当:中村 教博
tel and fax:022-795-6613
E-mail: n-naka*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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