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復興農学の現場を自分の目で

東北の農業復興と日本の農業新生を目指した、東北復興農学センターのフィールド実習が7月25日から3日間の日程で行われました。このカリキュラムには東北大学の学生のほか、一般社会人など、あわせて60名が参加しており、受講生はこの実習に至るまで、ディスカッションを重視した復興農学の講義を10回にわたって受けてきました。

フィールド実習ではじめに訪れた「千年希望の丘」(岩沼市)では、丘に植えられたタブノキが生きているかどうか、木につけられた番号ごとにチェックし、DNA分析用の葉を採取しました。今回調査した丘のタブノキは、昨年植林された、3か所(愛知・茨城・宮城)の産地のものです。この実習では、その生育が産地によって違うのか、遺伝地域性を調べることを目的として行われました。ある調査グループでは担当したタブノキのうち愛知県産のものがほぼ全て枯れているケースもあり、担当した陶山佳久准教授は、「予想を上回る違いが出た。通常の植林はどこが産地か分からないものを植えているので、貴重なデータが得られる。これからDNAを詳しく調べたい。」と期待を寄せました。

(写真1)説明する陶山佳久准教授

(写真2)植林されたタブノキの例(左:宮城・南三陸産 右:愛知県産)

続いて訪れた塩釜市の水産加工会社では、魚のアラと排水処理汚泥を使ってメタン発酵させ、そのバイオガスを利用して発電するシステムと、バイオガスを取り除いた廃液を人工湿地で排水処理するシステムが紹介されました。これは、震災時に困った、エネルギーの供給と、トイレなど排水処理機能、という2つの問題の解決により、災害に強い地域づくりを目的として開発されたものです。参加した学生の1人は「社会人の方々は質問にコストの視点がある等、学生とは違う。社会人の方と一緒に実習することで、非常に刺激になる。」と述べました。

(写真3)メタン発酵・人工湿地システム

(写真4)左:人工湿地で処理された水 右:人工湿地を通す前の廃液

参加したおよそ60名の受講者は、3日間にわたってフィールド実習を行い、8月末には被災地エクステンションに参加する予定です。

塩釜のNPO法人で震災復興プロジェクトに関わっていたという女性は「非常にわかりやすい講義。農学といっても畑だけでなく、水産業や林業も関わってくるので、宮城全体を意識しながら講義を受けてきた。ここで習ったことを、復興に取り組む多くの方に伝えていきたい。」と語りました。

(取材:総務企画部広報課 藤村由紀子)

問い合わせ先

東北大学大学院農学研究科 東北復興農学センター
TEL:022-717-8934
E-Mail:tascr-agri*ml.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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