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スピン軌道相互作用の直接検出法確立

国立大学法人東北大学大学院工学研究科 新田淳作教授、好田誠准教授、佐々木敦也(修士課程大学院生)、国橋要司博士(現NTT物性科学基礎研究所)と、 ドイツ・レーゲンスブルグ大学Klaus Richter教授の共同研究グループは、半導体細線構造に印加する磁場方向を変化させることにより、量子干渉効果が最大となる角度からスピン軌道相互作用を直接決定できる検出法を確立しました。

スピン軌道相互作用は電場を磁場に変換する相対論的な効果です。固体中では真空中に比べスピン軌道相互作用の効果が極めて強くなり、固体物理の様々な分野で重要な役割を果たす普遍的な効果です。また、磁場を用いることなく電場で電子スピンを生成・制御・検出することが可能となるためスピントロニクスに重要な役割を果たすことが期待されています。しかしながら、これまでのスピン軌道相互作用の評価には大きなばらつきがありました。半導体二次元電子 ガス中の電場に起因したRashbaスピン軌道相互作用と半導体構成原子のミクロな電場に起因したDresselhausスピン軌道相互作用の2つが存在するため、2つ以上の未知なパラメータを用いて実験データを解析する必要があったからです。一方、この2つのスピン軌道相互作用の強さを制御し等しくすることができるとスピン緩和の抑制された永久スピン旋回状態が実現されます。このため、キャリア濃度を決定するホール測定のような、信頼性が高くかつ簡便なスピン軌道相互作用の評価方法の確立が望まれていました。今回、半導体細線構造に面内磁場(半導体二次元電子ガスに平行な磁場)を印加することにより量子干渉効果の振幅が最大となる面内磁場方向から、実験データを解析することなく直接Rashbaスピン軌道相互作用とDresselhausスピン軌道相互作用の比を求めることができる信頼性の高い計測法の開発に成功しました。 本研究成果は、半導体や磁性体を用いたスピントロニクスだけでなくスピン量子情報やトポロジカル絶縁体、マヨラナフェルミ粒子等スピン軌道相互作用が重要な役割を果たす研究分野に大きなインパクトをもたらすことが期待されます。

本研究の成果は英国科学雑誌Nature Nanotechnologyのオンライン版(ロンドン時間2014年7月13日18:00発行)に掲載されました。

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問い合わせ先

東北大学大学院工学研究科
教授 新田 淳作
TEL : 022‐795‐7315
Email : nitta*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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