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太陽光を活用した高効率水蒸気発生材料の開発 ~多孔質グラフェンを用いた太陽熱エネルギーの高効率利用へ~

東北大学原子分子材料科学高等研究機構の伊藤 良一 助教、陳 明偉 教授らは、3次元構造を持つグラフェンを用いた高性能な水蒸気発生材料を開発しました。

太陽光は無尽蔵に生み出されるクリーンなエネルギー源として古くから活用されており、種々の分野で活用されています。近年は、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池の研究、実用化が進められています。しかしながら、この場合の太陽光エネルギーの利用効率は特殊な場合を除いて、20~30%台であり、太陽光を有効に活用する技術が求められています。一方、太陽熱温水器やヒートポンプ等の太陽光を熱エネルギーとして活用する方法や太陽光を集光することで媒体を高温に加熱して発電に使用する太陽熱発電も試みられています。

本研究は、3次元多孔質グラフェンを太陽熱温水器の集光材料に使用することで、太陽光の熱エネルギーを効率よく吸収し、さらにその熱エネルギーが局所的に集中することで、反射鏡やレンズ等の集光装置を用いることなく、水から水蒸気を発生させることに成功しました。太陽光で加熱された水は比重差による対流現象や熱伝導によって熱が拡散し、温度が均一化に向かうために熱水は保持されません。しかし、本研究に用いた3次元構造を有する多孔質グラフェンでは、そのミクロサイズの孔内に捕らわれた水が集中的に加熱されて熱が拡散することなく容易に高温化できることから、水蒸気への変換効率を従来の56%(グラファイト粉を用いた材料)から80%に高めることに成功しました。

この成果は、太陽光の熱エネルギーが従来の用途に加えて、蒸発・濃縮の用途にも簡単に活用できることを示した事例であり、例えば、海水から純水の精製、汚染水の濃縮・浄化等の種々の用途に適用できると期待されます。

本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「エネルギー高効率利用のための相界面科学」研究領域(研究総括:笠木 伸英)、および文部科学省の新学術領域研究「原子層科学」の一環として行われたもので、ドイツの科学雑誌「Advance Materials」に平成27年6月16日(現地時間)にオンライン掲載されました。

ナノ多孔質グラフェンの表面のSEM像。

ナノ多孔質グラフェンの側面のSEM像。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
教授 陳 明偉(チン メンゥエイ)
Tel:022-217-5959
Fax:022-217-5955
E-mail:mwchen*wpi-aimr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
助教 伊藤 良一(イトウ ヨシカズ)
Tel:022-217-5959
Fax:022-217-5955
E-mail:ito*wpi-aimr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道担当>
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
広報・アウトリーチオフィス
Tel:022-217-6146
E-mail:outreach*wpi-aimr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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