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ミトコンドリア病に対する新規治療薬の開発 ‐新規化合物MA-5はミトコンドリア病モデルマウスの寿命を延長させる‐

東北大学大学院医学系研究科病態液性制御学分野および医工学研究科分子病態医工学分野の阿部 高明教授らは、岡山理科大の林 謙一郎教授、自治医科大(前神奈川県立こども医療センター)の小坂 仁教授、筑波大の中田 和人教授らの研究グループとともに、難治疾患であるミトコンドリア病の進行を抑える効果がある新規化合物MA-5を開発しました。ミトコンドリア病は、細胞内のエネルギー産生工場ともいえるミトコンドリアに障害をきたした疾患で、神経・筋、循環器、代謝系、腎泌尿器系、血液系、視覚系、内分泌系、消化器系でエネルギー(ATP)産生低下がおこり、幼少期から非常に重篤な障害をきたす希少疾患です。しかし、現在のところ厳密に効果があると確定された治療薬はありません。本研究において、阿部教授らは腎臓病患者の血液中にATP産生亢進作用があるインドール化合物が含まれていることを発見しました。さらに、その化合物の誘導体ライブラリーをスクリーニングし、新規化合物MA-5を発見しました。MA-5はミトコンドリア病患者由来の培養細胞の細胞死を抑制し、ミトコンドリア病態マウスモデルの心臓・腎臓の呼吸を改善、生存率を上昇させました。本研究の成果は、現在治療法のないミトコンドリア病に対し、世界初かつ日本発の新しい治療薬の開発となりうる発見です。現在、MA-5の安全性試験が行われており、安全性が確認され次第ミトコンドリア病患者の治験へ入る予定です。

今回の研究成果は、2015年11月25日17時(日本時間26日7時)に米国腎臓学会学術誌Journal of the American Society of Nephrology電子版に掲載されました。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて行われました。

MA-5は多くの疾患の治療薬となる

ミトコンドリア病の新規治療薬MA-5の発見について 瀬名秀明(作家、薬学博士)

私が長編小説『パラサイト・イヴ』を発表してから20年になりますが、エネルギー代謝の要というべきミトコンドリアに関する研究は、健康長寿社会を目指すいまの私たちにとって、ますます重要で、かつ身近なものになってきたように思います。そのミトコンドリアがうまく働かないために生じるミトコンドリア病は、しかしいままで根本的な治療方法が見つからず、難病として知られていました。
 今回発表される新規ミトコンドリア治療薬MA-5は、私たちの体内にあるミトコンドリアの大切な役割を改めて教えてくれる素晴らしい成果だと思います。今後、この発見がいつかミトコンドリア病の治療薬として、大きく発展してゆくことを期待しています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 病態液性制御学分野
教授 阿部 高明(あべ たかあき)
電話番号:022-717-7163
Eメール:takaabe*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
講師 稲田 仁(いなだ ひとし)
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:hinada*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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