本文へ
ここから本文です

脂質分子LPAを受容する膜受容体の構造を解明~乏毛症やがん治療薬の創出につながる基盤情報が明らかに~

発表のポイント

  • 生体内で情報伝達物質として機能する脂質分子「リゾホスファチジン酸(LPA)」の受容体であるLPA6の立体構造を解明した。
  • LPA6の立体構造と生化学的な実験に基づき、LPA6がLPA分子を認識する仕組みを明らかにした。
  • LPA6が毛髪形成や血管形成に関与していることから、これらの経路を標的とする薬剤の合理的な設計が可能となることが期待される。

研究概要

 ヒトを含め多細胞生物の体を構成する細胞は、周囲の環境中の多様な情報を受け取り、細胞内で適切な応答を起こすことで環境に適応します。この細胞外から細胞内への情報伝達は、細胞の表面に埋まっている様々な受容体タンパク質が特定の情報伝達物質と結合することで行なわれます。脂質の一種であるリゾホスファチジン酸(LPA)は情報伝達物質の1つであり、これに結合するLPA受容体が6種類知られています。今回、東京大学大学院理学系研究科の濡木教授らのグループは、東北大学大学院薬学研究科の青木教授のグループなどとの共同研究のもと、LPA受容体の1つであるLPA6の立体構造をX線結晶構造解析により決定しました。さらに、立体構造情報に基づく変異体解析により、LPA分子はLPA6が受容体側面に持つ溝にはまり込んで認識される、という予想外の仕組みを明らかにしました。LPA6は先天性乏毛症と呼ばれる毛髪疾患に関わることが知られており、がん組織などでの血管形成に関与することも示唆されています。今回のLPA6の構造情報は、LPA6を標的とする薬剤開発の基礎となる情報を提供し、将来的な先天性乏毛症治療薬や抗がん剤の創薬開発研究を大きく進展させるものになると期待されます。

図 LPA分子の化学構造

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院薬学研究科
担当 青木 淳賢
電話:022-795-6860
E-mail:jaoki*mail.pharm.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ