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雄の脳は雌にプレゼントをあげるようにプログラムされている-ショウジョウバエでの研究成果-

 動物界では、雄が雌に求愛する際に、自分の食べたものを口移しで雌に与える婚姻贈呈が知られています。しかし、この行動を生み出す仕組みはこれまで不明でした。

 このたび東北大学大学院生命科学研究科の田中良弥(博士後期課程学生・日本学術振興会特別研究員)、山元大輔教授のグループは、ショウジョウバエのうち婚姻贈呈を行う一種を用い、光を当てると脳細胞が興奮するようゲノム編集を行いました。その雄を用いて光によって婚姻贈呈を誘発することに成功し、この謎めいた行動を生み出す脳の回路の解明に先鞭をつけました。

 遺伝研究に古くから使われてきたキイロショウジョウバエでは、フルートレス (fruitless: fru)という遺伝子が、性行動を生み出す神経回路の大枠を決定しています。この種は婚姻贈呈を示しませんが、同属のD. subobscura(和名なし)では雄による雌への婚姻贈呈が交尾成功に必須です。そこで、D. subobscuraに対してゲノム編集を行い、光を浴びた時に細胞に興奮を引き起こすタンパク質の遺伝子をfru遺伝子の内部に組み込みました。さらに、蛍光タンパク質も同時に持たせて、興奮を起こした細胞を目で見えるように工夫しました。こうして、fru遺伝子の指令によりD. subobscuraの脳内に形作られる神経回路を、光をあてて興奮させたところ、D. subobscuraに固有の婚姻贈呈行動の一部が、見事、惹き起こされたのです。

 このことから、D. subobscuraの脳内では、fru遺伝子の働く細胞がキイロショウジョウバエの脳と一部、異なっており、その独自の細胞たちが婚姻贈呈を実行すると推察されます。本研究成果は、北米神経科学会誌『ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス』 (Journal of Neuroscience) にて11月7日午前3時(日本時間)に発表されました。

図 D. subobscuraの婚姻贈呈行動。矢印が雄によって吐き戻された消化物を示す。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 山元 大輔(やまもと だいすけ)
電話番号:022- 217-6218
Eメール:daichan*m. tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道担当)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当:高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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