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金属膜の磁力を電気的にオンオフし、透過光を制御することに成功~ファラデー効果のオンオフを利用した電気的光制御~

 二枚の偏光板を重ねて一方を回転させると、透過光が明るくなったり暗くなったりします。光には偏光という性質があり、偏光板は特定の偏光面を持つ光しか通しません。そのため、一枚目の偏光板で偏光面が揃った光が二枚目の偏光板を透過するかどうかは、両偏光板の相対角度に依存します。一方で、偏光面の回転は光が透過する物質の磁気的性質とも深く関わっており、ファラデー効果として古くから知られています。同効果は光アイソレータなどに利用され、大きな電力を使って発生する磁界が主な制御手段とされてきました。

 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の日比野有岐大学院生、同 千葉大地准教授、豊田工業大学の粟野博之教授、電力中央研究所の小野新平上席研究員、東北大学の好田誠准教授などからなる研究チームは、自然界では磁石として存在するコバルト(金属)を薄膜にし、その磁力を電気的にオンオフする技術を用いて、ファラデー効果自体をオンオフすることに成功しました。つまり偏光面の回転そのものが、磁界ではなく電気的に制御できるわけです。これにより、偏光板との組み合わせで、光の透過強度を少ない電力で電気的に制御できるようになりました。

 すでに広く利用されている金属の磁石の膜を使った素子にもともと組み込まれた電極を用いて電圧を加える、というシンプルな構造で透過光を制御できるため、光通信を支える光素子の性能向上や小型化・集積化・省エネ化という面で、今後重要な役割を果たすことが期待されます。

 本成果は、2017年11月17日に、「アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express)」のオンライン版に掲載されました。なお、本研究は科研費基盤研究(S)の助成を受けて実施されました。

論文情報
雑誌名:「Applied Physics Express」(オンライン版2017年11月17日掲載)
論文タイトル:Electric-field-induced on/off switching of the Faraday effect
著者:日比野有岐、小山知弘、鷲見聡、粟野博之、三輪一元、小野新平、好田誠、*千葉大地
DOI番号:doi:10.7567/APEX.10.123201

図 ファラデーシグナルのオンオフデモ
(a)電圧ON/OFF下でのコバルト薄膜のファラデー信号に現れる磁化曲線。(b)電圧によるファラデー信号ON/OFF動作の実証。電圧がOFFの時では常磁性状態(非磁性状態)のため、ゼロ磁場付近ではファラデー信号は0であるが、電圧ON下では、強磁性状態(磁石状態)となり、ゼロ磁場にて有限のファラデー効果信号が誘起される。

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問い合わせ先

東北大学大学院工学研究科
准教授 好田 誠
電話:022-795-7316
E-mail:makoto*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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