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酸化ストレスを介した細胞死を促進する新規がん抑制分子の発見

発表のポイント

  • 酸化ストレス応答の制御分子ASK1の新規活性化促進因子としてTRIM48を同定。
  • TRIM48は、酸化ストレス時のASK1の活性化および細胞死の誘導を促進する。
  • TRIM48を高発現した腫瘍(がん)は、細胞死の誘導に伴って、増殖が著しく抑制されることから、TRIM48は強い抗がん作用を持つ

概要

 東北大学大学院薬学研究科の平田祐介助教、松沢厚教授らの研究グループは、同研究科の青木淳賢教授、稲田利文教授、産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹センター長、東京大学大学院薬学系研究科の一條秀憲教授らとの共同研究により、酸化ストレス応答の制御分子ASK1の新たな活性化促進因子としてTRIM48を同定し、その活性化促進作用の分子メカニズムおよび抗がん作用(がんの形成を抑制する働き)の重要性を明らかにしました。
私たちの体を構成する細胞は、活性酸素(酸化ストレス)や病原体感染などの様々なストレスに常に曝されており、ストレスを感知し、細胞死や免疫応答等の適切な応答を誘導することで、体の恒常性(健康)が維持されています。これらの応答の異常は、がんや免疫疾患などの様々な疾患発症の原因となりますが、その詳細な制御機構については、未解明な点がまだ多く残されています。

 本研究では、酸化ストレスを感知して活性化し、細胞死を誘導するASK1というキナーゼ分子の新たな活性化促進因子として、TRIM48を同定しました。詳細な解析から、TRIM48が酸化ストレス時のASK1の活性化を促進し、細胞死の亢進を引き起こす巧妙な仕組みが、分子レベルで明らかになりました。さらに、マウスを用いたがん細胞の皮下移植実験から、TRIM48を高発現する腫瘍(がん)は、細胞死の誘導に伴い、増殖が著しく抑制されることを見いだしました。この結果は、TRIM48 が強い抗がん作用を持つタンパク質であることを示しています。本研究は、TRIM48の機能を初めて明らかにし、がんの発症・進展を抑制する創薬標的分子としての可能性を示した、重要な基礎的知見として位置付けられます。

 本研究の成果は、11月28日(日本時間29日)にCell Reports誌に掲載されました。本研究は、三菱財団自然科学研究助成事業、島原科学振興会研究助成事業、日本応用酵素協会研究助成事業、ライフサイエンス振興財団研究助成事業、公益信託医用薬物研究奨励富岳基金事業、武田科学振興財団研究助成事業、文部科学省および日本学術振興会による科学研究費助成事業の支援を受けて行われました。

論文題目
TRIM48 promotes ASK1 activation and cell death through ubiquitination-dependent degradation of the ASK1 negative regulator PRMT1
Authors: Hirata Y, Katagiri K, Nagaoka K, Morishita T, Kudoh Y, Hatta T, Naguro I, Kano K, Udagawa T, Natsume T, Aoki J, Inada T, Noguchi T, Ichijo H, and Matsuzawa A

図:TRIM48によるASK1の活性制御機構とがん発症・進展の抑制作用

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院薬学研究科
担当 松沢厚
電話:022-795-6827
E-mail:matsushi*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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