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「レプトスピラ」細菌の運動の仕組みを解明 ~レプトスピラ感染症の発症機構の解明に役立つと期待~

【発表のポイント】

  • 「レプトスピラ(1)」という細菌は、らせん形の菌体を"ネジ"のように回して水中を泳ぎ、固体表面に貼りつくと"ドリル戦車"のように這いまわります。
  • 本研究では、レプトスピラの「水陸両用」ともいえる運動の仕組みを明らかにし、2種類の運動をスムーズに切り替える機構のモデルを提案しました。
  • レプトスピラは、野生動物、家畜、ペットの腎臓に棲みつき、人に感染すると黄疸や腎不全などを引き起こします。本成果は本症の発症メカニズムの解明、予防法の開発につながると期待されます。

【概要】

東北大学の田原孟氏(当時・大学院生)と中村修一助教らは、国立感染症研究所、大阪大学などと共同で、光学顕微鏡を用いた詳しい細胞運動解析により、「レプトスピラ」という運動性細菌の菌体表面における分子の動きなどを定量的に解析することに成功しました。その結果、接着性の分子が菌体表面を自由に動き回ることにより、スイミング(遊泳モード)からクロウリング(這い回りモード)へのスムーズな切り替えを可能にしていることが分かりました。

レプトスピラは、動物の皮膚から体内に侵入し、血流にのって全身に広がったあと、腎臓に棲みつきます。この研究の結果は、「動物内に侵入してから特定臓器に達するまではスイミングが、臓器接着後の移動にはクロウリングが使われる」という感染機構モデルを提案するもので、レプトスピラ感染症の発症機構の解明に役立つと期待されます。レプトスピラが属する「スピロヘータ」という細菌グループには、近年感染報告が急増している梅毒の原因菌(トレポネマ)など、人や動物の健康にとって重要な種が多く含まれます。これらは細胞構造や運動性に類似点が多いことから、本研究の成果は、他のスピロヘータ感染症の研究にも役立つものと思われます。

この成果は、2018年5月31日午前4時(日本時間)公開の米国AAASが発行するScience Advances誌(オンライン)で公開されました。

図1. 多様な細菌運動

【用語解説】

(1) レプトスピラ

細菌の一種。正確には、分類学上の属名(レプトスピラ属)。らせん形の細長い菌体の内部にべん毛が生えている。レプトスピラ属には、レプトスピラ症を引き起こす病原性種と、病原性のない種が含まれる。レプトスピラ症については、「研究内容の詳細・研究の背景」を参照。

(2) べん毛

細菌の主要な運動器官。大腸菌やサルモネラでは、菌体の表面から生える繊維状の構造体として観察される。べん毛は、繊維の根元(細胞膜中)に存在する「べん毛モーター」と呼ばれる蛋白質複合体によってスクリュープロペラのように回され、推進力を生み出す。べん毛の本数や生えている場所は、種によって異なる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院 工学研究科 応用物理学専攻 生物物理工学分野
中村 修一 (助教)
電話: 022-795-5849
E-mail: naka*bp.apph.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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