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大きな磁気相転移温度変化を示す"スポンジ磁石"

【発表のポイント】
●小分子の吸脱着により多孔性分子(スポンジ)磁石の磁気相転移温度*1の変化幅が70Kと大きく改善
●微小な構造変化のみで柔軟に電荷状態が変化する高性能な磁石骨格の創製に成功
●物理的刺激ではなく化学的刺激(分子吸脱着)により駆動する新規デバイス創製に期待

<概要>

東北大学金属材料研究所の張俊(理学研究科化学専攻博士後期課程2年・日本学術振興会特別研究員)、高坂亘 助教、宮坂等 教授らは、(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)の杉本邦久 博士とともに、小分子を出し入れすることで、磁石になる温度(磁気相転移温度)が従来よりも格段に大きく変化する新たな多孔性の分子性磁石の開発に成功しました。

本材料は金属―有機複合骨格(Metal-Organic Framework、 略称: MOF)*2と呼ばれる多孔性分子材料の一つです。柔軟性に富んだ層状構造を持ち、有機溶媒や水などの小分子を"スポンジ"のように出し入れでき、それに応答して磁性をかえるため、"スポンジ磁石"とも呼ばれます。小分子の出入りによる材料の構造変化は、磁性にも影響をもたらします。この特性は革新材料の開発に繫がると期待されていますが、一方で、構造変化のみでは磁性をOn/Off制御できるくらいの明確な性質変化をもたらすことは難しく、スポンジ磁石の高性能化が求められていました。

本材料では、小分子の出入りに伴う構造変化に応答して構成分子の電荷状態も変化するよう設計しました。すると、磁気相転移温度が分子脱離状態で約30 K、吸着状態で約100 K、その変化幅70 Kという、従来よりも格段に広い温度幅に渡ってスイッチできる(すなわち、磁性のOn/Off制御をしやすくする)ことを見出しました。これによりスポンジ磁石の高性能化が実現しました。

「スポンジ磁石」は従来の物理的な刺激(電場・光・圧力など)ではなく、化学的な刺激(分子吸脱着)により駆動する新しい材料です。本結果は新規デバイス創製に重要な基礎的デモンストレーションであり、イノベーション創出の鍵になると期待されます。

本研究成果は、2018年4月4日付けで米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

電子供与性分子(水車型ルテニウム錯体)と電子受容性分子(TCNQ誘導体)から合成される層状MOF磁石の模式図

<専門用語解説(注釈や補足説明など)>
※1 磁気相転移温度
磁石になる温度。それよりも低い温度では"磁石"として振る舞い、高い温度では、消磁してしまいます。

※2 金属―有機複合骨格(Metal-Organic Framework、 略称: MOF)
金属イオンと有機配位子の複合化によって合成される多次元格子のことです。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

研究内容に関して
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 助教
高坂 亘(コウサカ ワタル)
TEL:022-215-2033 FAX : 022-215-2031
Email : w-kosaka*imr.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 教授
宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)
TEL:022-215-2030 FAX : 022-215-2031
Email:miyasaka*imr.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
冨松 美沙(トミマツミサ)
TEL:022-215-2144 FAX : 022-215-2482
Email:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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