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グラフェンナノリボンを使った新型メモリを開発 フレキシブル不揮発性メモリの実現に期待

【発表のポイント】

  • 原子オーダーの厚みをもつグラフェンナノリボンを使った新型メモリを開発。
  • グラフェンナノリボン不揮発性メモリの集積化を実現。
  • 水中でも情報が消えない耐環境性に優れた不揮発性メモリ動作を実証。

【概要】

東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の加藤俊顕准教授、鈴木弘朗(同大学院生、現海外学振特別研究員)、金子俊郎教授らのグループは、原子オーダーの厚みを持つシート材料であるグラフェンナノリボン(GNR)注1)を用いて、耐環境性に優れた新型メモリの開発に成功しました。

光が照射されたところの電子状態が一時的に変化し、さらにその状態が光照射後も長時間維持されるパーシステント光伝導(PPC)注2)と呼ばれる現象が半導体材料では古くから知られていました。このPPCを活用することで光書き込みによる不揮発性メモリ注3)等の応用が期待されています。これまでこのPPCという現象は3次元のバルク半導体においてみられる現象でしたが、近年原子オーダーの厚みからなる原子層シートにおいてもPPCが発現することが報告されフレキシブル不揮発性メモリ注4)等の応用に向け大きな期待が集まっています。しかしながら原子層シートによるPPC発現は特定の環境下のみに限られており、実用に向け大きな障壁となっていました。今回我々は独自の手法で合成したGNRという一次元原子層物質を使い、さらに表面をプラズマ処理により機能化することで、様々な環境下でも安定に動作するGNR-PPC不揮発性メモリの開発に成功しました。さらにメモリの情報保持時間が72h以上とこれまでの同様の報告に比べ25,000倍以上長時間化することに成功しました。本手法で形成したメモリは水中でも動作することが可能であり、耐環境性に優れたフレキシブル不揮発性メモリやナノスケールスキャナー、各種生体センサー等への幅広い応用に貢献が期待されます。

本研究成果は、2018年8月7日18時(日本時間)にネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Scientific Reports(電子版)に掲載されました。

(a)本手法で合成した架橋GNRアレーの走査型電子顕微鏡像と酸素プラズマによるGNR機能化に関する構造模式図。(b)典型的な光照射に伴うGNRのPPC特性。

【用語解説】

注1 グラフェンナノリボン(GNR)
グラフェンと類似の炭素から構成される原子層物質。二次元構造のグラフェンに対し、GNRは幅がナノメートルオーダーの疑似1次元構造をとる。グラフェンは金属的伝導特性を示すが、GNRはバンドギャップを持つ半導体特性を示ことから半導体デバイス分野への応用が期待されている。

注2 パーシステント光伝導 (PPC)
光照射により伝導状態が変化し、さらにその状態が光照射終了後も保持される特性。界面欠陥を含む半導体材料においてその特性が古くから研究されている。不揮発性メモリとしての応用が期待されている。

注3 不揮発性メモリ
電源を切った状態でも情報が保存されるメモリ素子。

注4 フレキシブル不揮発性メモリ
機械的に柔軟な構造を持つ不揮発性メモリ。フレキシブルエレクトロニクスとして、フレキシブルディスプレイやフレキシブルトランジスタ等とともに次世代エレクトロニクス素子として期待がされている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
准教授 加藤 俊顕(カトウ トシアキ)
電話 022-795-7046
E-mail kato12*ecei.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道担当)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
電話 022-795-5988
E-mail eng-pr*eng.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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