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簡便に化学修飾できるウィルス状ポリマー粒子の作製に成功 高感度な抗原−抗体反応検出試薬などへの応用に期待

【発表のポイント】

  • 独自の微粒子作製法により、簡便な処理で化学修飾可能な官能基を組み込んだポリマー材料からナノサイズの表面構造を持ったウィルス状粒子の作製に成功。
  • 作製した粒子表面の特定の部位を化学修飾可能であることを超解像顕微鏡技術により証明。
  • 抗体等を位置特異的に結合することで臨床血液検査に用いられる抗原―抗体反応検出の高感度化に期待。

【概要】

東北大学材料科学高等研究所の藪浩准教授は、独カールスルーエ工科大学(KIT)のGuillame Delaittreグループリーダー、米ミシガン大学のJoerg Lahann教授らとともに、簡便な処理で化学修飾可能な官能基を組み込んだポリマー材料からナノサイズの表面構造を持ったウィルス状粒子の作製に成功しました。

高分子微粒子は臨床血液検査などにおいて、特定のタンパクを検出するためのマーカーとして使用されています。高分子微粒子に抗体を担持させ、特定のタンパクをサンドイッチすることにより、微粒子が凝集することで、タンパク濃度を測定することができます。抗体の微粒子表面での濃度や空間分布はこのラテクックス凝集法注1)において感度を大きく左右しますが、既往の高分子微粒子表面は単一材料でできており、吸着抗体の空間分布を制御することは不可能でした。今回開発した手法では、化学的に簡便に修飾可能なクリック官能基注2)を組み込んだブロックと、疎水性ブロックからなるブロック共重合体注3)から、独自の微粒子作製法である自己組織化析出(Self-ORganized Precipitation, SORP)法により粒子化することにより、粒子表面に2つのブロックの相分離に基づくウィルスのようなナノ構造を形成させ、さらに反応性官能基に微粒子作製後に色素を結合させることで、特定のブロック領域のみを選択的に化学修飾可能であることを、超解像顕微鏡技術注4)を用いて証明しました。今回開発した微粒子材料により医療分野における検査の高感度化などへの応用が期待されます。

図 本研究成果の概念を示す模式図。

【用語解説】

注1 ラテックス凝集法
液中において抗原物質に特異的な抗体をコーティングしたラテックス粒子を用い、抗原物質を検出する手法。抗原物質の濃度が上がるにつれ、ラテックスが凝集し濁度が上がるため、濁度(光散乱強度)を測定すると抗原物質の濃度が測定できる。

注2 クリック官能基
簡単かつ簡便に化学結合を形成するいくつかの反応に用いられる官能基。特定の物質と高効率で反応し、シートベルトがロックされるように素早く確実に結合が形成できる特徴がある。

注3 ブロック共重合体
2種類以上のポリマーが末端で結合した高分子材料。異なるポリマーの特徴をあわせ持たせることができ、ポリマー同士が混ざらない場合、各ポリマー相が数十nmサイズで水と油の様に相分離し、微細な構造を形成する。

注4 超解像顕微鏡技術
蛍光顕微鏡などの光学顕微鏡は回折限界により光の波長以下の構造を観察することはできないが、光学系や検出系を調整することでnmスケールの解像度を実現した顕微鏡技術。いくつかの方法があるが、本研究では蛍光を励起するスポットの周辺に蛍光を消光させる光を当てることで高い解像度を実現したSTimulated Emission Depletion (STED)法を用いた。この手法は2014年のノーベル化学賞の受賞テーマである。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学材料科学高等研究所
准教授 藪 浩
電話:022-217-5996
E-mail:hiroshi.yabu.d5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学材料科学高等研究所
広報・アウトリーチオフィス
電話:022-217-6146
E-mail:aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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